“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は趣向を変えて、すでに売れっ子となっているあの人気コンビはなぜ売れたのか? その理由を分析してみた――。

 お笑い芸人は“理想と現実のはざま”で紆余曲折しながら活動している人が多い。単独ライブは満席、同業者からリスペクトされる、賞レースでも自分の芸風を磨きながら貫いて活動する…。もちろんほとんどの芸人が、こんな理想を抱いています。

 しかし現実は、そんなにうまくいきません。営業で通じる数本のネタをやり続ける、テレビに出るためのネタを作る、仕事が減ってきたら周りの人に頼んで仕事を取ってくる…。こんな形にシフトチェンジをしていく芸人も多い。ただこの形も決して悪いことではない。本来の正当な芸人の活動でもあります。お笑い芸人がちゃんと仕事になっているのだから決して悪いことではない。むしろ、うらやましいことでもあります。

 ただ周りに流されることなく、理想の芸人像を現実にしている芸人もいます。その代表がAマッソではないでしょうか? 特にネタを作っている加納さんのカリスマ性はすごいと思います。外見の評価も高く、やりたい表現も評価され、さらにMCもこなす。6月には、キャパが約400席の東京・成城ホールでピンの単独ライブを5公演も開催するのだから、すごいのひと言です。

 これだけ大きい会場でピンの単独ライブを開催できるのは、「人間がブランド化している」ということ。「この人は何をしても面白い」「お金を使いたい」と思わせてくれるんです。

 Aマッソがすごいのは、2人とも結婚しているのに、勢いは全く落ちない。人気があった女性芸人でも、結婚とともに一気に人気がなくなる、なんてことも多いのですが、Aマッソは芸が評価されているので結婚がマイナスにならないのだと思います。

 何ごとも完璧で、あまりにもスキがないと逆に応援しづらかったり近寄りがたかったりするのですが、むらきゃみさんはもちろん、加納さんも意外と愛嬌もあるんです。

 Aマッソのキーポイントとなったのは2017年だと思います。この年、「M―1グランプリ」、「キングオブコント」、「THE W」で準決勝まで勝ち進むという快挙を成し遂げました。一般的には決勝に行かないと実力があっても気づかれないことが多いのですが、実は賞レースでもちゃんと結果を残している。お笑いハーベスト大賞で決勝に進んだのもこの年でした。

 また当時、テレビ朝日で放送された爆笑問題さんのバラエティー番組「バクモン学園」で、30組の芸人がショート動画で競う企画があり、目立って面白かったのがAマッソでした。私も出演していましたが、映像を駆使した見たことがないネタで現場は大盛り上がりだったのを覚えています。また単独ライブの会場を新宿バティオス(82席)から渋谷ユーロライブ(178席)に替えたのも17年でした。

 そんな感じで仕上がったAマッソを見たいと思った学生芸人が、早稲田大学で毎年行われる老舗の賞レース「大学生M―1グランプリ」に呼んだのも17年でした。決勝戦のMCを務め、ボケ倒して審査員もイジって笑いを取るなど無双状態でした。

 その後、20~22年には「THE W」で3年連続決勝進出。所属するワタナベエンターテインメントの「ワタナベお笑い№1決定戦」では23年に準優勝、24年には優勝するなど、才能が開花していきました。

 ただ、このように新しい切り口で自分のやりたいことをやっていると、“孤高のマイナー芸人”と見られることも多いのですが、Aマッソにはしっかりとメジャー志向もある。20年からはMBSラジオで「Aマッソの両A面」が始まり、しゃべりのうまさを世に広めました。

 現在のAマッソは、過去のライブでは想像もできない品性あふれる衣装に身を包み、タレント活動をしています。ただ昔から2人のファンである私は、時々強めの毒舌にワクワクしてしまう時があります。

 しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。