〝令和のF1相撲〟だ。大相撲春場所11日目(20日、大阪府立体育会館)、新入幕の尊富士(24=伊勢ヶ浜)が新大関の琴ノ若(26=佐渡ヶ嶽)を寄り切って初日から11連勝。「昭和の大横綱」大鵬が新入幕で打ち立てた記録に肩を並べ、110年ぶりの新入幕Vも現実味を帯びてきた。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(40=本紙評論家)は土俵に出現した超新星の強さを徹底分析。若貴時代の名力士に姿を重ね合わせた。

 尊富士が大横綱に肩を並べた。琴ノ若に攻め込まれる場面もあったが、懐に飛び込んで逆襲。右を差して前に出ると、かいなを返しながら一気に寄り切った。新入幕で初日から11連勝は1960年初場所の大鵬以来64年ぶり。「偉大な方の記録に並んだのはうれしく思っています。大鵬関のイメージ? 王鵬関のおじいちゃん」と笑みを浮かべた。

 この日の一番について、秀ノ山親方は「尊富士は新入幕で初めて経験する大関戦でも、臆することなく自分の相撲を貫いていた。立ち合いから迷いがなく、馬力とスピードを生かして前に出る相撲は、昔の琴錦関の『F1相撲』を思わせる。逆に琴ノ若は尊富士のペースに合わせてしまい、相手の勢いにのまれてしまった」と分析する。

 琴錦(現朝日山親方)は群雄割拠の若貴時代に活躍。小兵ながら速攻を武器に2度の優勝を達成し、「F1相撲」と称された。尊富士の体重143キロは、現在の幕内で軽量クラス。自分より体格で勝る相手を次々と打ち破ってきた姿を、かつての名力士と重ね合わせた。さらに、秀ノ山親方は新入幕でも萎縮せずに力を発揮できている要因を次のように指摘する。

「いきなり新入幕で役力士と当てられたら、どうしても相手を上に見てしまうところ。尊富士の場合は部屋に横綱の照ノ富士がいるから、気後れせずに戦うことができている。普段から一番強い人と稽古してるのだから、それだけで自信になる。本場所で大関と当たっても、さほど意識せずに自分の相撲を取り切ることだけに集中できるのでは」。横綱がいる環境そのものが、他の部屋にはない強みとなっている。

 その上で、秀ノ山親方は「勢いだけでは11連勝もできない。格上の相手を出足で持っていけるのは、地力がある証拠。このまま優勝してもおかしくない」と実力に太鼓判を押した。新入幕Vなら、1914年5月場所の両国以来110年ぶりの快挙。しかも11日目の時点で後続に2差つけており、千秋楽を待たずに優勝を決めてしまう可能性もある。

 その尊富士は「優勝を意識? いや、全く。ケガをしないように、一日しっかりやるだけ」。土俵に現れた超新星が、さらなる偉業で〝荒れる春場所〟を締めくくる。