昨年10月期の日本テレビ系のドラマ「セクシー田中さん」の原作者で、漫画家の芦原妃名子さん(享年50)が急死したことを受け、同作の発行元である小学館と小学館の第一コミック局編集者一同が8日、声明を発表し、調査と再発防止を宣言した。SNS上では日テレと小学館に対して「原作者へのリスペクトがない」と厳しい声が寄せられているだけに、他のテレビ局や出版社も早急な対応に着手し始めている。

 この日、小学館は公式サイトを更新し、「芦原妃名子先生のご逝去に際して」と題した文章を掲載した。

 最初の文書は「小学館」名義で、「二度とこうした悲劇を繰り返さないために、現在、調査を進めており、今後、再発防止に努めて参ります」などと宣言。さらに、驚かされるのは、併せて掲載された現場編集者が書いたという「小学館第一コミック局編集者一同」名義の文章だ。

 芦原さんがドラマ化の際、作品を守るために修正等の要望を出したことに対し、「セクシー田中さん」第7巻の中で「恐らくめちゃくちゃうざかったと思います…」とつづっていたことを紹介。「守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない。私たち編集者がついていながら、このようなことを感じさせたことが悔やまれてなりません」と後悔の念をつづった。

 その上で、再発防止に向けて「著作人格権」重視の徹底を挙げ、「著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています」。今後の映像化についても「原作者をお守りすることを第一」とし「ドラマ制作サイドと編集部の交渉の形を具体的に是正できる部分はないか、よりよい形を提案していきます」と宣言した。

 一連の文書から感じるのは、原作のドラマ化に際して〝原作者軽視〟の土壌があったこと。そして、これは日テレだけではなく、他局のドラマ制作においても同じ事情を抱えているということだ。すでに水面下では対応に追われているという。

「原作となる人気作品は各局の争奪戦になる。しかし、あくまで作品がどうかが重要で、ドラマの制作サイドとしては原作者の思いなどを軽視していた部分があった。これからはそうはいかない。作品のリサーチはもちろん、原作者の人柄をはじめ〝こだわり〟〝要望〟などを事細かにリサーチした上で、映像化に動き出す必要が出てきた」(テレビ局関係者)

 とはいえ、ドラマ界が完全に「原作者ファースト」に舵を切れるかどうかは未知数だ。

 かつてのような高視聴率を取れない時代となっているが、それでも近年はむしろドラマは増加傾向にある。それは民放公式テレビ配信サービス「TVer」が登場したことにより、見逃し配信再生数が重視されるようになったからだ。

「TVer」再生数上位はほぼドラマが独占しており、テレビ局にとっては〝稼げるコンテンツ〟になりつつある。

「ドラマ班への期待が増す中、原作者とコミュニケーションを密に取り、細かな要望にも応えながら映像化していく余裕が現場にあるか。これからはそうしなければいけなくなるのは間違いないのですが…」(ドラマ制作関係者)

 今後の困難な状況を見据え、〝映像化しやすい原作者のリスト〟を作成する動きもあるという。

「2000年代のドラマ界は原作ものが主流だったが、最近は22年の『silent』(フジテレビ系)や23年の『VIVANT』(TBS系)などオリジナル脚本のドラマがヒットしている。まだまだ数は少ないが、各局ともオリジナル脚本のドラマに力を入れる動きが加速しそうですね」(前出のテレビ局関係者)

 ドラマ界が変わるきっかけになるかもしれない。