【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。ファスト映画を無断で動画投稿サイトに公開した男女3人に対して大手映画会社など13社が損害賠償を求めた訴訟の判決が下り、東京地裁は所在の分からなかった40代男性に請求通り5億円の支払いを命じました。

 3人のうち2人については昨年、5億円を支払うよう命じる判決が言い渡されていました。残りの男性1人にも同様の判決を下し、そのうえで3人で連帯して5億円を支払うよう命じました。

 ファスト映画とは、映画を10分程度にまとめ字幕やナレーションをつけあらすじを明かす違法動画です。損害賠償5億円に驚く人もいるかもしれませんが映画会社側によるとファスト映画の再生回数は1000万回以上にのぼり、損害の総額は約20億円。それだけに厳しく対処したわけです。

 無断投稿した人間が悪いのですが、一方でファスト映画を見た人がいっぱいいたことも事実です。タイパ重視に加え、最近では映画を見る前に結末を知りたい人も増えているようです。楽しみ方は人それぞれなんだけどストーリーに加えて、制作者の意図を知ることで、より作品を楽しむことができます。

 現在公開中の「マイ・エレメント」(2023年)もバックボーンを知るとより面白くなります。エレメントとは元素という意味で火、水、土、風という異なる特性を持つエレメントたちが暮らすエレメント・シティが舞台です。主人公は火のエレメントの女の子エンバー。両親は移民で雑貨店を経営し、エンバーも店を継ぐことを受け入れ、同じエレメント同士でコミュニティーを築いていました。ある日、水のエレメントの男の子・ウェイドと出会い、恋に落ちます。ウェイドにひかれるにつれ、知らなかった世界への興味を募らせていくエンバー。しかしエレメント・シティでは違うエレメントとは関われないというルールがありました。火と水。正反対の性質の2人の恋がどんな化学反応を起こすのか。結末は劇場でお楽しみください。

 ここまでの解説だとラブストーリーだと思いますよね。実はアメリカの移民問題も描かれています。エンバーの住む場所はアメリカにおけるコリアンタウンの比喩になってるんです。ピーター・ソーン監督は韓国系アメリカ人で、韓国からアメリカに移住した両親が苦労をしながら雑貨店を経営していた経験が着想のきっかけなんです。

 ラブストーリーの中に移民、人種差別問題といった骨太のメッセージも込められています。時間など忘れて映画の世界に没頭してみてはいかがでしょうか。 

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。