ベテランレーサーがしのぎを削るボートレース若松のプレミアムGⅠ「第24回マスターズチャンピオン」が18日に開幕する。満45歳以上の猛者たちが名を連ね、もはやSGと区別がつかないほど豪華メンバーとなった。そこで今回も元天才ジョッキー・田原成貴氏(64)が〝ボートレース愛〟にあふれるコラムを寄稿。今大会に出場する古豪戦士へエールを送るとともに、世のシニア世代へ熱いメッセージを寄せた。

【田原成貴氏が熱く語る】桜が散って新緑の季節も間近となり、巷では真新しいスーツを着た新社会人が目につくようになった。そんな初々しい姿とは裏腹に、会社帰りの酒場ではシニア世代の嘆き節も聞こえてくる。

「昔はよかったなぁ」
「最近の若いヤツの感覚にはついていけない」
「オレたちが若いころは…」

 若者の台頭に押され、隅に追いやられたベテランたち。オレも同世代だから、へこたれる彼らの気持ちはよく分かる。それでも腐らず前を向き、戦わねばならない。だからこそ、オレは世の中のシニア世代に言いたい! 嘆く前にボートレース「マズターズチャンピオン」を見よ、と。

ボートレース愛が止まらない田原成貴氏
ボートレース愛が止まらない田原成貴氏

 今回、出そろったメンバーはまさにボート界の古豪たち。一人ひとりの名前を見ながら懐かしみ、同時に熱い感情が込み上げてきた。驚いたのは井口佳典選手(45=三重)の名前だ。ついに登録番号4000番台がマスターズに出るのか…。井口選手といえば、デビューと同時に恐れ知らずのレースぶりで名をはせた「銀河系85期」のリーダー格。世代交代を推し進める若手の代名詞のような存在だった彼が、マスターズの舞台に立つ日が来るとは、時がたつのは本当に早い。

 さて、オレがなぜシニア世代に「マスターズを見よ」と言いたいか。それは彼らの戦いの中に「今を生きる答え」があるからだ。例えば「進入争い」を考えてほしい。昔は枠番に関係なく誰がインか、どのコースを取るか、今より予想が難しかった。たとえ枠なりに収まったとしても、スキあらばインを狙う猛者がたくさんいた。

 我々はそれを想像しながら舟券を買ったものだ。特筆すべきは前づけした人間の「責任」だ。前づけしてインを奪った者のケジメとして1Mは意地でもまくらせまいという強い気持ち。仮に共倒れになっても自分が先に回ってやるという気概。そこにはプライドだけではない、勝負師のモラルがあったとオレは思う。

 マスターズの魅力は水面の戦いにとどまらない。かつては陸の上でも常にピリピリした空気が漂っていた。同県同門の先輩には敬意を払いつつ、勝負になったら別だ。「仲良しこよし」「なれ合い」は一切ない。そんなヒリヒリ感がたまらなかった。戦う前から駆け引きが始まり、水面上では妥協なき競り合いが行われる。マスターズに出場する名人たちの存在はボートレースの奥深さを際立たせるのだ。

初日ドリーム組の(右から)今垣光太郎、松井繁、赤岩善生、井口佳典、石渡鉄兵、瓜生正義
初日ドリーム組の(右から)今垣光太郎、松井繁、赤岩善生、井口佳典、石渡鉄兵、瓜生正義

 こんなことを言うと「時代遅れ」とバカにされるかもしれないが、オレはマスターズを見ないとボートレースは語れないと思っている。時として若者に迎合することも必要だが、自分が戦ってきた時代に矜持を持つことも忘れないでほしい。

 今、オレが熱弁したタイプの選手こそ、今回ボートレース若松に集結する52人。ドリーム戦を見ればよく分かる。井口選手や赤岩善生選手(47=愛知)はマスターズでは新参者の部類だが、若いころから骨っぽく、なれ合いはなかった。

 そしてオレがドリーム戦の本命に据える今垣光太郎選手(53=福井)は、古き良き時代を体現したレーサーの典型。デビュー当時から〝いぶし銀〟の味を醸しだし、水面でのバチバチした戦いに何度も心を揺さぶられた。

 世のシニア世代よ。「時代に取り残された」などと卑屈になってはいけない。今こそベテランが火花を散らすマスターズの舞台に足を運び、彼らから刺激をもらってほしい。