青山周平と鈴木圭一郎の2強時代が続くオートレース界に驚異の新人が出現し、脚光を浴びている。川口所属の35期生、佐藤励(22)だ。2021年12月にデビューし、10か月が経過した昨年10月の山陽GⅡ若獅子杯をV。2級車では史上最速となるグレードレース制覇を成し遂げた。その後も快進撃は続き、同12月に新走路となった川口では3秒350と破格のタイムをマークし従来の川口2級車でのレコードタイムを更新した。「2級車で最重ハン。誰もやったことのないことをやりたい」と無限の可能性を秘める新人の熱き思いに迫った。

 デビューして丸1年。史上最年少でグレードレースを制し、恐るべき2級車と称される22歳の素顔は快活かつ明朗な青年だ。

「しゃべるのは好きですからね。なるべく明るく見ている方にレース以外でも楽しんでもらいたい。とにかく目立ちたいんです」と語り口はいつでも心地良い。

「今だからこそできることをやりたい」

 記録を次々と塗り替えることに並々ならぬ意欲を見せており「青山さん、圭一郎さんもできなかった2級車時代に最重ハンになって戦いたい」と声を弾ませている。

 排気量の少ない新人時代は基本的にはグリップ全開のレースが多く、1級車に比べ、微妙なグリップ操作はそれほど必要としないだけに「1級車になってからが勝負」とのビジョンを持つ選手が多い中、佐藤の考え方は異なる。

「11月の伊勢崎(3日目)で358が出て自分でもビックリしました。車が仕上がって、気持ち良く乗れたにしてもあそこまで出てるとは思わなかった。今度は地元で自己ベストを出して優勝する。その繰り返しをして、最終的には誰もできなかった最重ハンまでいきたい。2級車に乗る期間はみんな限られているし、だからこそ今しかできないことをやってみたいんです」

 出足が甘い2級車は同ハンからしっかりスタートを残すのが難しい。だが一度、ペースに乗って“アケアケ”で外をひたすらブン回せば、スピードある若手なら十分勝負になる。

 2級車のレコードタイムは2002年12月10日の伊勢崎で27期の荒尾聡(41)が叩き出した3秒332。当時とはタイヤの精度も違い、高速タイムが出やすかったことを考えれば佐藤の3秒350はそれ以上の価値があるかもしれない。

 また、12月3日に佐藤が叩き出した3秒350は02年に荒尾がマークした3秒365の川口レコードを大幅に更新するもので、底知れぬ可能性を感じさせる。

 かつて青山と鈴木も2級車時代にSGデビューを果たし、最終的にはスーパースターフェスタでハンデ10前に置かれたのが最高位だった。目指すはその先。前人未到の2級車で背負う最重ハンだ。

 2000年生まれの22歳。この世代が自分の興味ある情報を得るのも、発信するのも手段はともに動画が主流だ。いつでもどこでも気になることがあれば映像で確かめる。

 オンデマンドの生活が日常の大半を占めるようになった。

 現役トップレーサーがかつて歩んだ2級車時代の走りはこれ以上ないお手本でもあり「青山さん、圭一郎さんのレースは動画で何度も見て目に焼き付けました。どんなコース取りをしてどれぐらいのタイムで上がっているのか見てるだけで勉強になります」。11年12月、青山が2級車で7車抜きを決めて伝説となった猛追劇は同期の間でも神業として話題に上ることも多い。

 青山、鈴木と同じく佐藤も順調にいけば、4月のオールスター(飯塚)でその仲間入りを果たす可能性が高い。

 デビューして丸1年が経過し、2級車での実績もレース内容も申し分ない。順風満帆にも映るが、ここまでの道のりは「挫折と失敗の繰り返し」で複雑な思いも抱えていた。新人のデビュー時期は7月が定期だが、その時にバンクにいたのは同期の中でも3人の女子だけ。佐藤を含め、他の候補生は規則違反を犯し、謹慎生活を送っており、デビューすら危ぶまれた時期もあった。

「自分がやってしまったことだし、すべて自分が悪い。あの時はホントにつらかったし、並大抵の努力では汚名返上できないことは分かっている。結果を出すだけではなく、人間をもっと磨いて、たくさんのファンの方に応援される選手にならなければいけない。周囲に押しつぶされずにこの業界で生き残っていくには強く自分を持つしかない」

 現在のオート界は青山と鈴木の2強時代が続いている。佐藤がその中に割って入り、3強を形成する日はそう遠くはないだろう。

「そうありたいし、そうならなければならない」

 残り半年の2級車人生。速さを追い求めるだけでなく、ファンにいかに愛されるか。そんな思いも胸に宿る。

【出足が甘い2級車】現在のオートレーサー総数は386人でそのうち女子選手は21人。オートレースで使用されるバイクは1級車の排気量が599CCで、2級車は498CCと約100CCの差がある。デビューした新人は約1年半、2級車で慣らしてから1級車に乗り替わるのが通例だ。2級車は出足が甘く、スタートで残せないと苦戦するケースが多い。なお、2級車時代に最重ハンになった選手はまだ誰もいない。

☆さとう・れい 2000年3月5日生まれ、千葉県習志野市出身。川口所属の35期生。5歳時にカートレースを始め、12~16歳までロードバイクの世界で経験を積んだ。21年12月の川口でデビュー。22年10月の山陽GⅡ若獅子杯で初Vを飾る。35期同期には新井日和、西翔子らがいる。独身。身長176センチ、体重53キロ。血液型=O。