〝珍事〟は成長の証し――。大相撲名古屋場所8日目(17日、愛知県体育館)、幕内若元春(28=荒汐)が横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)に屈して4敗目(4勝)。一度は寄り切ったが、立行司の式守伊之助が「まわし待った」をかけていたため組み直して再開し、最後は横綱の下手投げに転がされた。

 前代未聞のハプニングに会場内は騒然。若元春は「(まわし待ったは)全然分からなかった」としつつ「体が離れた時に横綱が不思議そうな顔をしていたので、何かあったのかな」と〝異変〟を感じていた。ただ、初の横綱挑戦は思わぬ展開となったが「出し切りました。やっぱり横綱という感じです」とスッキリした表情だった。

 行司のタイミングが適切だったかなど疑問が残る一方で、若元春は横綱相手に善戦して地力を見せつけた。

 祖父は元小結若葉山、父は元幕下若信夫の相撲一家に生まれた。3兄弟の次男で、兄の幕下若隆元、弟の関脇若隆景と同部屋で汗を流している。2011年九州場所で初土俵を踏み、今年1月の初場所で新入幕。「身近にいい稽古相手がいる」と話すように、時間はかかったが相撲を磨いてきた自負はある。

 幕内土俵では先場所まで3場所連続で9勝6敗だった。番付を上げながらも目指すは二桁勝利だ。

 今場所は大関正代(時津風)を破り、横綱とも対戦して存在感を発揮。「役力士と取れるのは光栄。楽しんでいる場所ではあります」。〝遅咲き〟の28歳は幻となった金星を気にすることなく前進する。