【コロナに負けるな!有名人の緊急事態宣言】新型コロナウイルス禍で悲鳴を上げているのが医療現場だ。物資の不足、次々に埋まる病床、院内感染のリスク…。それでも“崩壊”だけは食い止めようと、医師や看護師たちは必死で闘っている。そんな医療従事者たちのために、ロックバンド「T―BOLAN」の森友嵐士(54)が立ち上がった。先月30日にネット上のプラットフォーム「ありがとうのチカラ」を開設したのだ。このほど本紙の“リモートインタビュー”に応じた森友に、今回の新プロジェクトの真意について話を聞いた。

「ありがとうのチカラ」は、誰でも参加できる「ありがとうの気持ちを伝える」場だ。やり方は簡単。思い思いの感謝の言葉が書かれたメッセージボード(素材はHPに添付)を掲げる写真を投稿するのみ。一般人だけではなく、著名人も続々参加している。

「T―BOLAN」のメンバーはもちろんのこと、相川七瀬、友近、比叡山延暦寺執行(しぎょう)の小堀光實氏…。入院でもしない限り、医療従事者に感謝を伝える機会は少ないだけに格好の企画だ。

 森友が言う。

「最前線でコロナと闘っている医療従事者のみなさんが、一番大変だと思う。自分も感染するリスクがあるわけでしょ? 医療従事者というのは医師や看護師だけじゃないよ。院内を清掃する方や機材を搬入する業者、食事を作る人…みんなが力を合わせて初めて病院は回っている。そういう方々に感謝の気持ちを伝えれば、少しでも力になれるんじゃないかと今回つくったんだ」

 森友といえば、ミュージシャンの枠にとらわれず、東日本大震災をはじめ、広島の豪雨災害などで復興支援活動に取り組んできた。もともと今回の活動も、コロナが蔓延する前から模索していたという。

 当初は楽曲CDを構想していたが、ここにきてコロナが急速に感染拡大。「CDに焼いて配布している場合じゃない!」と方針転換し、感謝の思いを伝えることを軸に据えた(楽曲「ありがとうのうた~いのちの手紙~」はフリー音源としてサイトに掲出)。

「一番分かりやすい感謝の言葉は何かと考えたら、やっぱり『ありがとう』なんだよね。それぞれの声は小さくても、集まればみなさんの心に届けられるんじゃないかと。そういう拠点になれればいい」

 緊急事態宣言下で新規感染者の数は減少傾向にあるものの、医療現場は疲弊している。防護服や専用マスクなどの物資は不足し、病床はひっ迫。医師や看護師はギリギリのシフト調整を強いられ、院内感染が発生している病院もある。そんな最前線で闘っている人たちの気持ちを少しでも軽くしたいというわけだ。

 それは医療従事者向けにとどまらない。一人ひとりが力を合わせなければならないときに、ネット上では誰かが誰かを批判する声であふれ、不安をあおるような書き込みも目立つ。そんな殺伐とした空気に、森友は心を痛めていた。

「ウイルス以上に怖いのは、そういうすさんだ心だよ。大変な時期でみんなストレスを抱えている。不安にもなるだろう。でも、人を思いやれなくなるのはいけない。だからこそ、オレは『ありがとう』という言葉をあふれさせたい。誰か任せじゃなく、このプロジェクトを知った方々、それぞれが主人公だということ。みんなで育て届けていくことが大切なんです」

 先月2日、森友は自身が親善大使を務める比叡山延暦寺の「伝教大師1200年大遠忌不滅の法灯全国行脚分灯式」に出席。この困難な状況にある人々に平穏が訪れるように祈りをささげた。まだ終息の時期は見えないが、カリスマロックミュージシャンの情熱は燃え盛る一方だ。

 最後に森友は「みんなで、ありがとうをたくさんつないでいきましょう。ありがとうは、人間の持つ、優しさ、思いやり、心の強さを与えてくれる言霊、音霊だと思います。よろしくお願いします」と声を大にして訴えた。

【音楽制作で新たな発見】現在「T―BOLAN」は、敢行予定だった全国ツアー「T―BOLAN LIVE HEAVEN 2020『the Best』~繋~」の公演が延期や中止となっている。メンバーとは直接会えないため、ネットでやりとりする日々。

 森友は「時間はあるので曲も作ってますよ。本来なら一緒に作ったほうがいいけど、リモートでもできないことはない。そういう発見はありました」と前向きだ。特にミーティングについては利点を感じているという。

「やろうとしたら、みんなのスケジュール調整からやらなきゃいけないじゃん。それで遅くなりがちだけど、リモートなら『じゃあ、今やっちゃう?』とすぐつなげるからいいよね」

 すでに良曲も完成したというからファンは期待していい。森友は「コロナ終息したら何をやりたいかって? ライブに決まってるでしょ! みんなに会いに行くよ!」と笑顔を見せた。

☆もりとも・あらし=1965年10月30日、広島県生まれ。ドラムの青木和義とバンド活動を開始した後、ベースの上野博文、ギターの五味孝氏が加入し、「T―BOLAN」を結成。ソロを含め精力的な活動を行う。多趣味でも知られ、陶芸、書道、釣りなどをたしなむ。オンラインサロン「ARASHI’S BAR reboot~思考の選択~」を主宰。