ロシアのウクライナ侵攻で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記のウハウハが止まらない状況になってきた。ロシアのプーチン大統領が不足しているミサイルの発注先として、北朝鮮に密使を飛ばし、大口注文したとみられるのだ。ミサイル発射を繰り返していた正恩氏の“営業”が実りつつあるという。
先月11日以降2週間以上、表舞台から姿を消し、“粛清説”や“核兵器準備説”など、さまざまな臆測が飛び交っていたロシア軍トップのショイグ国防相の動向がこのほど明らかになった。複数のウクライナメディアによると、ショイグ氏を乗せた政府専用機の行き先を追ったところ、中国と北朝鮮に向かっていたというのだ。
ショイグ氏の目的は何なのか。米国防総省の調べでは、ロシアは侵攻で15%以上の戦力を失ったとされる。一方で消耗が激しいのがミサイル関連。経済制裁でさまざまなモノの輸入が困難となっている中、ミサイルや部品の調達難に直面しているのだ。
北朝鮮事情に詳しい元韓国国防省北朝鮮分析官で拓殖大学主任研究員の高永喆氏は「ロシアはウクライナ侵攻で保有しているミサイルの70~80%を発射し、在庫が少なくなっている。プーチンの右腕とされるショイグが中国と北朝鮮にミサイルの提供で直接交渉したとみられます。中国は欧米の顔色をうかがい、応じなかったようですが、北朝鮮はプーチンのプロポーズに大喜びしたでしょう」と指摘する。
北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、失敗も多いだけに品質に疑問符もつくところがあるが、高氏は「貧しい片田舎というイメージがあるが、核開発と弾道ミサイル技術では先進国並みのハイレベルにある。特にスカッドミサイルは世界のベストセラー商品ともいえる」と話す。
ストックホルム国際平和研究所の調査では1987~2009年の22年間で世界の弾道ミサイル輸出は1200基あり、北朝鮮製は、うち4割となる510基を占めている。2位はロシア製、3位は中国製だった。北朝鮮製のミサイルはイラン、エジプト、シリア、リビア、アラブ首長国連邦(UAE)、パキスタンなどに輸出されている。
正恩氏は11年に事実上のトップに立ち、ミサイル開発を進めてきた。ミサイル発射は金日成主席、金正日総書記時代は計50回にも満たないが、正恩氏はわずか10年で100回以上の発射を繰り返している。
原油価格高騰にわく中東諸国にミサイルを輸出し、その資金を惜しみなく投入していることで、技術力は著しく向上。昨年、実験に成功した新型巡航ミサイルや今年3月に発射した「火星17号」は米国東海岸にも届く大陸間弾道ミサイルで、国際社会にインパクトを与えたばかりだった。
「今年は計11発(回)ものミサイルを発射し、世界各国で放送され、国際武器市場に広告料なしで宣伝されている状態です。そこにロシアからミサイルの注文が入れば、さらにお墨付きを得たようなもので、イランやシリア、パキスタン、中東諸国からどんどん輸出してほしいとなってくる」(高氏)
北朝鮮のミサイルは、日本と韓国および両国に駐留している米軍に向けられているとされるが、ロシアからの大口注文で、正恩氏に思わぬ特需が訪れたともいえる。かつて米国のトランプ前大統領から「チビのロケットマン」と揶揄された正恩氏だが、この商機を逃すまいと「ビッグなロケットマン」になりつつある。












