幕内貴ノ岩(27=貴乃花)への暴行問題で“電撃引退”をした横綱日馬富士(33=伊勢ヶ浜)が29日に会見を開き、その模様をテレビ各局が生中継した。横綱は終始うつむいて謝罪したが、その横で主役以上に目立ってしまったのが、同席した師匠の伊勢ヶ浜親方(57=元横綱旭富士)だ。序盤こそ涙ながらに引退報告したが、記者の執拗な質問に次第にいら立ち、持論をまくし立て、答えに窮する日馬富士に「黙ってればいいよ」と指示を出す場面も。前代未聞の“師匠の逆ギレ会見”を専門家はどう見たのか――。
目を真っ赤にして会見場に現れたのは日馬富士ではなく、伊勢ヶ浜親方だった。貴ノ岩への暴行問題で自慢の愛弟子が引退。無念の思いが込み上げたのか、引退届の提出を報告した冒頭あいさつではハンカチで何度も目元をぬぐった。
だが、後半の報道陣との質疑応答に移ると、態度が豹変。暴行問題をめぐる対応について問われると「何の対応ですか? 私は(問題を)知ってすぐに謝罪しましたよ。電話でもしました。(貴乃花親方に)断られたこともありましたけど、そういったことはきちんとやりました」と語気を強めた。
報道陣で親方の怒りの標的になったのは、テレビ朝日の「報道ステーション」の富川悠太アナウンサー(41)。日馬富士にとって、新入幕や横綱デビューなど何かと縁のある九州場所で引退を決めた心境について再三問いただしたところ、伊勢ヶ浜親方が“カットイン”。
「(九州場所を最後に引退を)決めたというか、そうなったんじゃないんですか。それを今言っているんだから。その質問はちょっとおかしいんじゃないですか!」とまくし立てた。
その後も富川アナとのやりとりはかみ合わず、ついには「他の人に代わってください。1人1つで。話をちゃんとしないといけないので」と要求。なおも食い下がる富川アナが日馬富士に「今後も相撲に関わっていきたい思いはあるか?」と聞くと、親方はため息交じりに「今日引退したばかりだから、それは出ないでしょう」と述べ、隣でうつむく日馬富士に小声で「黙ってればいいよ」と指示した。
ネット上では「富川の質問がひどすぎる」との意見もある一方で「前代未聞の逆ギレ会見」「この師匠にして、この弟子あり」という声が殺到。引退会見での親方の振る舞いとしてどうなのか。
著書「アンガーマネジメント入門」(朝日新聞出版)で知られる“怒りの専門家”安藤俊介氏は親方の姿勢に着目。
「親方は質疑応答の際、アゴを上げ、体も反り気味に話しています。これは相手を威嚇している典型。本人が自覚している以上に不機嫌に見えてしまいます」
その上で「怒りというのは、何かを守るための感情なんです。親方にとって、それは日馬富士なんだと思います。会見の態度を見る限り、少なくとも親方は引退に納得がいっていません。これまでならセーフだったものが、何でアウトなんだ、と。あの会見は現在の相撲協会そのものを表しているようにも見えます」と安藤氏は分析した。
ちなみに、報道陣に無言を貫く貴乃花親方(45=元横綱)のアンガーコントロールについては「今のところは成功しています。ただ、本気で改革を訴えたいのならば、怒りを多少出した方が響くこともあります」(安藤氏)。
一方「大人力検定」で知られるコラムニストの石原壮一郎氏は「記者の質問も間抜けでしたが、そういう質問を連発して、本音を引き出そうとするのが会見の場。相撲で例えるなら、いろんな技を仕掛けてきた相手に対し、受け止めていなすべきところを、張り手を見舞ってしまった感じ。横綱相撲ではありませんでしたね。ただ、日馬富士は自分を守ろうと感情的になった親方をありがたく思っているでしょう」。
今回の件で浮かび上がった横綱と師匠の関係は、昨年強姦致傷容疑で逮捕され不起訴となった元俳優・高畑裕太(24)とその母・高畑淳子(63)の関係に通ずるものがあるとも。
石原氏は「悪さをした子供の代わりに親が出てきて『うちの子がそんなことするわけない』と言っているが、中身がめちゃくちゃで周囲に理解されない感じと似ている」と指摘する。
とはいえ、角界を舞台にした「仁義なき戦い」は始まったばかり。石原氏いわく「旭鷲山やら朝青龍も出てきて、見ているこちらとしてはこんなに面白いものはない。今回の逆ギレ会見も予想の上をいった」。騒動の収拾にはまだまだ時間がかかりそうだ。












