フェンシングのエペ日本代表が6月の沖縄合宿でレジャーに興じていた問題を巡り、波紋が広がっている。日本フェンシング協会の会長でタレントの武井壮(49)は2日に開かれた理事会後に事情を説明。選手にとってリフレッシュや休養は必要との認識を示した。強化合宿のあり方には、賛否両論が湧き起こっている。そこでアスリートをサポートしてきたメンタルトレーナーを直撃。一連の騒動に対する専門家の見解は――。


 武井会長は「週刊文春」の報道によって明るみに出たフェンシング合宿問題について釈明。練習メニューは「朝はヨガ、午前中はフェンシング、午後はフリー」と説明し、フリーは「その時間を自由に使っていい」との意味合いだったことを強調した。実際に練習にあてていた選手も複数存在するという。

 武井会長は「ハードなトレーニングだけがアスリートが行う練習ではない。適切な休養も必要」とした上で、今回の合宿を「アスリートに必要なものだった」「(内容は)不適切ではなかった」と結論づけた。

 ただ一連の騒動に対し、株式会社AXIA代表取締役でメンタルトレーナーの衣川竜也氏は「アスリートにとってのリフレッシュと、今回の問題は切り離すべき」と主張する。

 多くの五輪アスリートのメンタルサポートを行う衣川氏は「脳が疲れたままだとパフォーマンスは上がらない。もちろんリフレッシュすることは大事です」と大前提を述べた上で「でも、それは合宿中にやらなくてもいいのではないか。協会は強化目的で合宿を開いている。アスリートは一社会人として、自分の余暇の時間にリフレッシュすればいい。レジャーも含めて自己管理の世界であり、それを協会に設定されないようではダメでしょう」と指摘した。

 また、今回は強化担当者が事前に提出した合宿内容が「仮」のもので、実際のメニューを協会側が把握できていなかったことも判明。さらに、日本オリンピック委員会(JOC)からの助成金を申請予定だったことも問題を複雑にしている。結果的に合宿では関係者の家族が同部屋に宿泊したケースもあったため助成金の申請は見送ることになったが、これで問題が一件落着するわけではない。

 衣川氏は「今回はどちらかというと組織論の問題。(合宿内容が)事実と違っていたことが『レジャーも必要』という話とまざってボヤけてしまうのは良くない。それにスポーツ団体はお粗末だと世の中に知られたら、結果として強化費がどんどん下りない状況になり、未来の子供たちの足かせになると思います」と厳しい見方を示した。

 今後は第三者委員会の設立を含め、引き続き調査が行われる予定。展開次第では、さらに騒動が拡大する可能性もありそうだ。