近年、アトピーに悩む人は増加しているが、その中で注目されているのが患者のためのiPhoneアプリだ。症状を記録・共有でき、日本最大のアトピー患者コミュニティーに成長した。いったい、どんなアプリなのだろうか

【症状を見える化】
「アトピヨ」というこのアプリは、アトピー特有の皮膚症状を画像と文字で匿名投稿することにより、症状を記録し、共有できる。使い方は簡単で、アプリをiPhoneにダウンロードしてカメラを起動し、症状部位を撮影・投稿する。

 患部の画像と症状のメモ、さらには使用した薬などを匿名で投稿することにより、自身の治療経過が「見える化」される。投稿により患者は治療経過をアプリに記録でき、その記録は医師への症状説明のアシストにもなる。皮膚科医へのアンケートでもアトピヨによる症状の写真記録が「診療に役立つ」と半数以上が評価しているとされる。

 それだけではない。他のユーザーも投稿を参考にできる。投稿された画像は発症部位ごとに時系列表示され、自分以外のユーザーとも共有されるため、多くの患者の症状、経過を自身の病状の参考にできるのだ。画像を検索するには、「顔」「手」「足」といった部位や「薬、クリーム」などのカテゴリー、さらには「赤み」「カサカサ」といったキーワードを使う。

 アプリ開発者のアトピヨ合同会社Ryotaro Ako代表社員によれば、「いわばアトピー患者同士のインスタグラムのようなものです」とのこと。Ako氏もアトピー患者だったという。

 なお、顔などのプライベート画像は非公開にする機能もある。

【配信開始から会員数は急増】
 アトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症に伴って、かゆみのある湿疹が慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気である。アレルギーを起こしやすい体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる。

 皮膚のバリア機能が低下すると、外から抗原や刺激が入りやすくなり、免疫細胞が反応してアレルギー性の炎症を引き起こす。さらに、かゆみを感じる神経がかゆみを感じやすい状態となっているため、かくことでさらにバリア機能が低下する悪循環に陥ってしまう。

 アトピーは、以前は大人になれば治ると言われることもあった。だが現在は、大人になっても治らない人や、大人になってからなる人が増えている。アトピー患者数は近年急増傾向にあり、厚生労働省によれば2008年に約35万人だった患者数が17年には約51万人になっている。

 アトピーは慢性疾患である。簡単には治らず夏季に改善しても冬季には乾燥して悪化してしまう。特に症状は肌に出るため、見た目でわかることが多く、患者の精神的負担になる。かゆみはほぼ24時間続くため、日常生活にも支障をきたす。

 繰り返す症状に患者は不安になりがちで、他の患者の経過を参考にしたがる。「画像を見た人が投稿者に対して応援コメントを書き込むことも多く、みんなで励まし合っているのです」(Ako氏)。ユーザーのコメント分析でも、ユーザー同士のコミュニケーションによってポジティブに取り組むようになっているという。アトピー患者に安心を与えるアプリなのだ。

 アトピヨは18年に配信開始されると反響を呼び、既にダウンロード数は2万を超えた。投稿画像数は4万枚、うち1万枚がアプリ内で公開されている。利用料金は無料で、アプリ内の広告もないのが利用者急増の理由だ。

 アプリに対する評価も高く、5段階の平均評価で「4・5」にも達する。いまやアトピヨは日本最大級のアトピー患者向けアプリ・コミュニティーだとされている。