ピークアウトかそれとも…。東京都が12日に発表した新型コロナウイルスの新規感染者数は過去2番目となる4989人。全国では大阪府の1654人、福岡県の1040人など20府県で過去最多を記録し、国内全体では新たに1万8889人が確認されたという。東京都が突出して多いわけだが、一部では検査のキャパシティーに限界が来ているともささやかれている。ピークアウトはいつになるのか。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は12日に提言を公表。26日までの2週間で集中的に対策を強化し、東京都の人出を昼夜問わず緊急事態宣言直前の7月前半に比べて5割減らす必要があるなどと訴えた。分科会の尾身茂会長は記者会見で「このままでは救える命が救えない状態になり、それは少しずつ始まりつつある」と述べ、災害医療であると捉えるべしとした。

 一方、東京都のモニタリング会議では専門家が「制御不能で災害レベルの非常事態だ」と現状を分析。医療提供体制が「深刻な機能不全に陥っている」とした。感染者が増えており、自宅療養者は12日時点で2万726人となっている。

 12日には60代男性が2回のワクチン接種が終わった後に陽性となる「ブレークスルー感染」で死亡したことが判明。11日には自宅療養中の30代男性が死亡したことも分かっており、人ごとではない状況となっている。

 全国的に過去最多となる地域が多い中、東京都は5000人を超えなかったことで、ピークアウトを指摘する声も出てきている。5000人超は8月5日以降はない。つまり、“山は越えた”ということだが、本当だろうか。

「いえ、ピークアウトはしていません」と話すのは「都民ファーストの会」所属の尾島紘平東京都議だ。

「都の福祉保健局に問い合わせたところ、実際に回せている1日の検査数は約2万6000件とのことでした。本来なら1日最大7万件、緊急時なら約10万件なのですが、どこかがボトルネックになっているのでしょう」

 都の新型コロナウイルス感染症対策サイトによると、12日更新の陽性率は22・8%。「1日の検査数約2万6000件が限界で、陽性率を約20%とするならば、感染者数は約5000人で頭打ちになるのです。分科会は新規感染者数が1万人もあり得ると話していましたが、検査すればそれくらいになるのかもしれません」(尾島氏)

 ピークアウト説が出たのは3連休があったので、検査数や感染者数が減り、そう見えた可能性がある。「連休にはよくあること。発熱相談件数は減っていないし、陽性率は上がっている。これからは陽性率に注目です。ちなみにWHO(世界保健機関)が適正としている陽性率は5%。つまり陽性率が2ケタというのは、検査が追いついていないということになります」(同)

 意図的に新規感染者数を5000人前後に調整しているわけではなく、検査数が足りないというわけだ。検査数が追いつかない理由は人手不足にありそうだ。「保健所ではもう濃厚接触者を追い切れていません。本当なら原因までたどっていきたいのですが、人員が足りないのです。もちろん都としては増やしていても、限界があります。積極的疫学調査には保健師が必要ですが、資格がいるのです」(同)

 結局、国民にできることといったら手洗い、うがいにマスク着用、そして外出や移動の自粛しかない。「申し訳ないが自己防衛をお願いしたい。ワクチン接種のスピードを考えると、少なくとも年内は気を付けたい」と尾島氏。

 感染者数はもう実態を表していないかもしれない。陽性率が下がるかどうかを注目しよう。