世界中の国々を表現した213の着物と帯を制作し、着物を通じて世界をつなぎ、平和のメッセージを伝える「KIMONOプロジェクト」(主宰・一般社団法人)は、東京五輪開会式でお披露目をすることができなかった。開会式後に違和感を感じてネット検索する人が殺到し、24日午後の時点でトレンドランキング1位になった。

 当初のオリンピック開催予定日だった2020年7月24日に、各国平等に200万円の制作費でKIMONO(振り袖と帯)が完成したことを発表。制作費は全て寄付で賄われ、4億円以上もの募金が集まっていた。

 4月に日本人初のメジャーリーガー「マッシー村上」こと村上雅則氏、オリンピアン瀬戸山正二氏の2人を理事に迎えるなど、準備を着々と進めていたイマジンワンワールドの代表理事手嶋信道氏は、サイトでこうコメントを出した。

「7月9日には無観客での開催が決定しました。本来でしたら、世界中の観客で盛り上がるはずの開会式のスタンドでした。その空席通路にぐるりと一周KIMONOを展示し、『世界はきっと、ひとつになれる』を表現することについて、組織委員会にご検討いただき、最後の最後ギリギリまで、開会式でのKIMONOの登場について、その晴れの舞台を探ってまいりました」

 しかし、組織内の内紛で、着物が社団に渡されないという事態が発生したという。前理事長が代表取締役を務める会社にKIMONOの保管を委託したが、同社の財務状況と保管状態が悪いことが判明し、今年4月にイマジンワールドは、同社との契約を解除し、KIMONOの返還を求めたという。

 手嶋氏は「同社は返還を拒絶しました。TOKYO2020開幕ギリギリまで交渉して参りましたが、合意に至りませんでした。そのため、私どもは開会式にKIMONOを提供できませんでした。組織委員会の方には、TOKYO2020開幕3日前という間際までご検討いただきましたことについて、橋本聖子会長に心より感謝申し上げます」としている。

 被害は開会式だけではない。社団関係者は「レバノン、ベナンなど、個別にKIMONO使用の依頼をいただいていますが、KIMONOを返してもらえないので対応できず、当惑しています。選手村の皆さん、大使、オリンピック大臣、楽しみにしていらっしゃるのに」と語る。

 前理事長が使途不明金疑惑等で退任し、2019年に手嶋氏が理事長に就任。理事が一新されたことを受けて、前理事長派と現理事派との対立は裁判沙汰になっているという。

「係争中とはいえ、オリンピックの開会式でのKIMONO披露という当初の目的が組織内の問題のために妨げられるのは、本末転倒。KIMONOを人質みたいにして、主張する前理事長派は、卑劣極まりないです。裁判は現在3つ前理事長側から提訴しています。オリンピックや社団業務妨害のために係争中状態にしているみたいです」(社団関係者)

 国内外のメディアから問い合わせが殺到しており、代表理事交代の経緯、前理事長の不祥事に関して同法人のサイトは公開している。