祭典をやっている場合なのか――。開幕まで1か月あまりとなった東京五輪を巡り、サッカー、マラソン、競歩が行われる札幌市の地区労働組合総連合(札幌地区労連)が東京五輪の中止を求めている。

 札幌市では、5月13日に499人が新型コロナウイルスに感染。ピークは超えたが、以前高止まりが続いており、札幌地区労連の担当者は「今でも医療体制の9割が満杯状態。札幌市の方は市内だけで(患者を)収容し切れず、近辺の市町村に入院するように対応をお願いしている。病院に入院できず、自宅で亡くなっている事例もある」と声を大にする。

 ただでさえ、余裕のない医療体制。「医療従事者が費やされる五輪を今の時期にやる状況ではない」との声が札幌地区労連内からも出ていることから、16日に東京五輪の中止を求める要請書を札幌市役所に提出した。

 札幌地区労連の担当者によると、札幌市スポーツ局の中田雅幸局長らに対して「新たに札幌で東京五輪などをしたら、医療に負担がかかる恐れがあるから絶対にやめてほしいという切実な報告した。札幌市も国と同じように『安全・安心』って言っているが、何を根拠に言っているのか。医療現場への対策もきちんと示されていない中で五輪をやるっていうことは、到底納得できないという現場の声が出ている。人流が絶対に増えるから、そういうリスクを伴うことがはっきりしている東京五輪はやめてほしいという現場からの訴えがあった」と伝えたという。

 この言葉に中田局長は「スポーツ局長としては東京五輪に向けて最大限いろいろ対策を強化して進めていきたいとの思いでやっているが、みなさんの意見は今日お伺いしたので、札幌市長(秋元克広氏=65)にはぜひお伝えできるようにしたいと思います」と回答したというが、現時点で秋元市長から東京五輪の中止に関する発言は出ていない。

 残された時間はわずか。市民からの切実な叫びが届く日は、果たして訪れるのだろうか。