東京五輪・パラリンピックが開催されるのか、まだまだ不透明な状況に、出版業界から悲鳴が上がっている。

「今の時期は本来なら、五輪に出場するアスリートを特集する雑誌や単行本の出版ラッシュになっているはず。でも今年は、五輪が開催されるのかどうかすら分からない状況だから、本を作るのが非常に難しい」(出版関係者)

 問題の一つは、新型コロナ禍でアスリートを直接取材することが困難なこと。以前なら、旧知のスポーツライターなどは、練習などに自由に顔を出すことができたが、現状は取材に多くの制限がかかっている。

 スポーツ雑誌の老舗として知られる「ナンバー」(文芸春秋)は先月、五輪特集号を発売したが、そのタイトルは「オリンピックの話をしよう。アスリート50人が語る東京五輪」というものだった。

「『ナンバー』が東京五輪を目前に控えたこの時期、五輪特集号を出すのは当然のことだけど、今回は過去に五輪に出場したアスリートを中心に五輪について語ってもらう、という内容だった。これはいま、アスリートに直接取材できないから、苦肉の策としてこういう企画にするしかなかったのでしょう」(同)

 もちろん練習に顔を出せなくても、アポを取ってインタビュー取材できればいいのだが、「そっちの方がハードルが高い」とか。「コロナ禍じゃなかったら、『五輪に懸ける思い』とか『メダルへの意気込み』などを聞けばいいだけだけど、今は『東京五輪を開催すべきと思うか?』ということを聞かざるを得ない。そうなると、取材もなかなか受けてもらえませんから」(同)

 雑誌で〝五輪特集〟が出版されないのは、こんな事情があるようだ。