地図に“新たなレイヤー”を――。住宅地図で知られるゼンリンが手がける雑貨ブランド「Map Design GALLERY」が発売した一風変わったトレーディングカードが話題を呼んでいる。あまり興味を示さなかった流通ウォッチャーの渡辺広明氏が「これは面白い!」と身を乗り出したわけとは…。
住宅地図で知られるゼンリン(福岡県北九州市)は日本の地図情報企業として最大手。1980年代からは地図のデジタル化にいち早く取り組みカーナビ向けの地図で国内約7割のシェアを誇る。
いまや紙の地図ではなく、スマートフォンで現在地確認や経路検索をするのが当たり前になったが、全国47都道府県に拠点を持ち、調査員が現地をくまなくチェックする地図情報の濃密さはGoogleマップを凌駕する。
「僕がローソンで店長をしていた90年代、売り物の地図もありましたが、95年にはお客さまに周辺の道を尋ねられた時にご案内できるようにとゼンリンの住宅地図が備品として置かれましたね。僕の場合、この地図で商圏分析をしたこともあって、常連の親しいお客さまが意外と車で遠くから来ていたことが分かったり、新しい道路ができて交通量が変わったりとかなり勉強になりました」(渡辺氏)
建物名や居住者名も記されていることから、警察や消防、市役所といった公共機関や不動産業者もゼンリンの地図を重宝しており、縁の下の力持ちであることは間違いない。
そんなゼンリンが消費者との新たな接点をつくるために始めた雑貨ブランドが「Map Design GALLERY」だ。地図が持つ唯一無二の個性と場所への愛着や記憶、コミュニケーションのきっかけとしての限りない可能性に着目し、2016年に地図柄文具を発売。21年からは47都道府県の形をデザインしたピンバッジやハンカチなどを順次展開。そして新たな挑戦として25年に「有人離島カード」を投入したところ、驚きの結果が待っていた。
「最初は社内でも『こんなもの売れるの?』って言われていたんですけど、予想以上に反応が良くて初回ボックスは即完売でした。30~40代男性のお客さまを想定していたのですが、第1弾から第4弾まで出していくにつれて女性比率が上がったのも意外でした」(ビジネス企画室コンシューマ企画部マーケティング企画課・長縄樹里氏)
そして今年9月、全国の国道マニアを狂喜乱舞させる新シリーズ「一般国道カード」(7枚入り1パック税込み550円)が発売された。表面には国道のルートを地図上に表現し、起点・終点や総延長距離、海上区間の距離、通過する都道府県などの情報を掲載。裏面には日本列島の中での国道の位置や範囲を表記し、俯瞰を楽しめるデザインとなっている。
「『有人離島に続くテーマを…』と社内でヒアリングをしたら、社内にも国道が好きな人が多く、地図に関連したものとしては王道だなと…。弊社には膨大な地図情報がありますが、あえてそれらを“全部盛り”せず、地図や国道に縁のない人にもカッコいいと思ってもらえるデザインにするところが大変でした。このカードで興味を持ったらぜひ“その先”は地図で調べてほしいと思います」(ビジネス企画室マップデザイン推進部商品企画推進課・高橋圭佑氏)
日本の一般国道は1号から507号まで存在し、48の番号が欠番となっているため全部で459路線。第1弾(76路線)と第2弾(77路線)の153路線でスタートし、今後は第6弾まで順次展開される予定だ。
ちなみに東京・日本橋から青森市に至る国道4号(約838・7キロ)が実際に走れる道路としては最長だが、海上区間を含む総延長では、沖縄県那覇市と鹿児島市を結ぶ国道58号(約875キロ、そのうち海上区間は約609キロ)が最長となる。
当初は「一般国道カード」への興味関心が薄かった渡辺氏もさまざまな楽しみ方を教えてもらうと「なるほど、これは面白い!」と前のめりになり、「自分が走ったことがある国道なら親近感が湧くし、知らない国道だとしても行ってみたくなる。とても全部は行けないだろうけど(笑い)」と“国道ツーリズム”に理解を示した。
「一般国道カード」では総延長が短いほどレア度が上がる仕掛けもある。では日本一短い国道はどこにある?“未知”を知る楽しみは何歳になっても尽きないだろう。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。
















