安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者を描いた映画が、今月末に予定される安倍氏の国葬に合わせて公開されることが分かった。監督は、あの「日本赤軍」元メンバー。物議を醸すこと必至の問題作は、盛り上がる国葬反対運動の一環なのか、それとも――。
安倍氏の国葬は27日、東京・日本武道館で行われる。開催をめぐって否定的な意見が多い中、あろうことか、山上容疑者を描く〝問題作〟が国葬に合わせて公開される。その映画でメガホンを取るのは足立正生監督(83)。日本赤軍の元メンバーで、国際手配されたことで知られる。
脚本は、若松プロダクションを舞台にした映画「止められるか、俺たちを」(2018年、白石和彌監督、主演・門脇麦)の井上淳一氏(57)。足立監督、井上氏の若松プロタッグとなると〝反権力〟が思い浮かぶ。今作も、安倍氏や国葬に対する批判的なテーマをはらんでいるのか。
取材に応じた井上氏は、やはり安倍氏を評価せず、国葬にも反対のスタンスを示した。一方で映画化に踏み切った理由は、映画界と社会への〝アンチテーゼ〟が強いと訴えた。
映画界に対しては「足立さんも私も、時代は違うけど若松プロにいた。足立さんは若松プロにいた1970年、自決した三島由紀夫について2日で脚本を書き、1週間後に撮影し、2か月後に上映したりしていた。社会事件でアイロニカル(皮肉)なことをやっていた。今の映画界は製作しても、公開するのは1年後。時代への即応力がなくなった感じがある」。
また海外の映画界を念頭に「米国も韓国も社会的な事件をエンターテインメントにしている」と指摘。一例として、ベトナム戦争に関する米国防総省の機密文書を暴露した実話ベースの社会派映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017年、スティーブン・スピルバーグ監督)を挙げた。
日本社会に対しては「あの事件が起きなければ、自民党と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の関係は表に出なかった。それも含め、事件についてもっと議論してもいいんじゃないかと。肯定でも否定でもなくて。映画は昔、議論の素材になった」と投げかけた。
山上容疑者を描いた今作は、ドキュメンタリーではなくフィクション。劇中では「山上」という実名ではなく、山上容疑者を思わせる男を30代俳優が演じる。安倍氏の描き方は明かさなかった。
一方、衝撃的だった安倍氏が銃撃されるシーンの描写については「再現はできない。事件現場の駅周辺の道路使用許可を取り、大勢のエキストラを集めて――ができないから。カッコ悪いけど、低予算。本来作るのであれば製作費1億円は下らないところ、700万円でやるので」。
8月28日にクランクインし、9月4日にクランクアップ。今月26日に東京・新宿の「ロフトプラスワン」、国葬当日の27日に渋谷の「ロフト9」ほか、全国7~8か所のミニシアターで公開予定だ。
映画化には当然、さまざまな声が飛び交うことも予想されるが…。「どんどん言ってください。ただ、どうせなら見てから批判してほしい」と意に介していない。












