アイドルグループ「SKE48」と「乃木坂46」が急接近だ。SKE48を運営する株式会社ゼストの親会社である「KeyHolder」が7月にも乃木坂46運営会社の持分の50%を持つ「株式会社ノース・リバー」を子会社化することが濃厚となった。アイドル界のみならずエンターテインメント業界全体が注目する超大型M&Aの期待と不安とは――。

 JASDAQ上場企業の「KeyHolder」は5月14日に「株式会社ノース・リバー」の全株式を取得する方針を発表した。ノース・リバーはアイドルグループ「乃木坂46」を運営する「乃木坂46合同会社」の持分の50%を保有している。株式譲受後、ノース・リバーはKeyHolderの連結子会社、乃木坂46合同会社はKeyHolderの持分法適用会社となる予定。KeyHolderはSKE48を運営する株式会社ゼストの親会社でもあるだけに、この買収が実現すればSKE48にとって乃木坂46はAKB48やNMB48などの48グループよりも運営会社的には近い存在となる。

 この発表を受けて翌15日のKeyHolder株は前日比30円高の120円とストップ高となった。3月に行われる予定だった株主優待コンサート(コロナ禍の影響で中止)にSKE48の出演が予定されていたこともあって同社の株主にはSKEファンが多いのだが、3月13日には年初来安値46円をつけていた株価が3桁に回復。“乃木坂効果”で上昇傾向となっている。

 予定通りに進めば、7月1日にKeyHolderがノース・リバーの全株式を取得し、乃木坂46がグループインすることになるが、一方で今回の買収に対してSKE48と乃木坂46双方のファンから不安の声も上がっているという。アイドルファン数百人とのネットワークを持つ競輪評論家の加藤慎平氏によれば「乃木坂ファンはKeyHolder側が乃木坂46の運営方針にいろいろと意見を出してくるのではないか、SKEファンはSKE48ではなく乃木坂46のメンバーのプロモーションを優先されるのではないかと心配しているのです」というのだ。

 しかし、この点に関してはそれほど心配する必要はなさそうだ。関係者の話を総合すると乃木坂46合同会社はノース・リバーが持分の50%を持っているものの主導的な立場で運営を行っているのはソニー・ミュージックレーベルズであり、それは今後も変わらない見通し。ゼストの社長でもあるKeyHolderの赤塚善洋副社長は同じKeyHolder傘下の広告代理店事業会社「株式会社allfuz」で乃木坂46の公式ゲームアプリ「乃木恋」の制作などを手掛け、乃木坂46運営やメンバーと一緒に仕事をしてきた間柄だけに、摩擦も起こりにくいとみられている。

 またSKE48に関しても「ゼストは連結の子会社です。今後もSKE48に注力していくことに変わりはありません」(KeyHolder社)としている。4月からメ~テレでは初となるSKE48の冠番組「SKE48ガチでアレ!?始めちゃいました ~涙の1年間ダンス修行~」がスタートしたが、これも社長の赤塚氏を中心としたゼストのスタッフがメ~テレとの関係を深めたことが大きな要因と言われているだけに、今後も地元・名古屋を中心にSKE48への積極的なプロモーションが期待できそうだ。

 KeyHolderは積極的なM&Aによって事業規模の拡大を推し進め、グループ傘下には映像制作会社、芸能プロダクション、スタジオ運営、広告代理店などが揃っている。そこに乃木坂46も加わることになれば「グループ間のシナジー効果(相乗効果)が期待できる」(KeyHolder社)というだけに、KeyHolderグループの今後の展開にはエンタメ業界全体から多くの注目が集まっている。