5月下旬ごろから突如姿を消し、「当局による軟禁」が報じられていた中国のトップ女優、范冰冰(ファン・ビンビン=37)について国営通信新華社は3日、巨額脱税容疑で取り調べを受けていたが、捜査が終了し、すでに軟禁状態から解放されたと報じた。国税当局側は関連企業も含めて約146億円という巨額の支払い命令を出したが、刑事訴追はしない方針。しかも、軟禁されていたのはリゾート施設という特別扱いだった。米ハリウッド映画にも出演していたファンの資産や今後の女優活動はどうなるのか。

 新華社によると、中国国家税務総局などはファンと関連企業が映画の出演料をめぐり、計約1億4000万元(約23億円)を脱税したと認定。両者に対し追徴課税や滞納金、罰金の計約8億8000万元(約146億円)の支払いを命じた。

 ファンは3日、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で「法律を尊重するべきだった」と謝罪コメントを発表した。

 中国メディアによると、ファンは「とある住居施設」で軟禁され、当局の監視下にあったが、税務当局の取り調べが終了した約2週間前に解放された。場所は特定されていないが、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は情報筋の話として、中国東部・江蘇省のリゾート施設で事情聴取後、北京に移されて取り調べを受けていたと報じた。世界的美人女優だけに特別扱いしたようだ。

 約146億円のうち、ファンに科せられたのは罰金4億7900万元(約79億3000万円)と滞納金2億8800万元(約47億7000万円)の約127億円。残りは関連企業が支払う。新華社は、ファンに犯罪歴はないことから、期日までに支払いを済ませれば、当局は刑事訴追はしない方針とも伝えた。

 ファンの巨額脱税疑惑が浮上したのは今年5月。中国国営中央テレビの元アナウンサーが「ファンが脱税に関わっている」とネットに投稿したことがきっかけだった。その後、ファンは6月にブログを更新したのを最後に公の場に姿を見せず、消息不明になっていた。

 政務当局は6月、ファンが映画出演の際に偽の契約書を作成し、ギャラを過少申告していた疑いがあるとして調査を開始。マネジャーらが会計帳簿の破棄を指示するなど脱税の隠蔽を図った疑いで、当局の取り調べを受けている。

 巨額の罰金処分に「共産党による全財産没収なのでは?」という声も上がるが、中国芸能事情に詳しい中国人ジャーナリスト周来友氏は「彼女にとっては全然大したことがない金額。もっと稼いでいますから」と語る。

 ファンは10代で芸能活動を始め、出演作が次々とヒット。米経済誌フォーブスの「世界で最も稼いだ女優」の1人に選ばれたこともある。女優活動での年収は50億円。投資や事業を合わせると年収は100億円超とも。資産は500億円とも、3000億円ともいわれるからだ。

 とはいえ、今回の騒動で芸能界引退の可能性も取りざたされている。

「おそらく3年ほど雲隠れし、世間から脱税のことが忘れられていたら、出てくる可能性もあるでしょう。なんせ、中国トップのべっぴんさんですからオファーは続くでしょう。その際、政府のお墨付きのプロパガンダ作品などに積極的に出演すれば、世間や当局からも大目に見てもらえるのでは」(周氏)

 トップ女優をつるし上げた当局の“見せしめ”に中国芸能界は大揺れだ。

「税務当局から芸能人や企業に対し、年末までに修正申告すれば罪に問わないという呼び掛けがありました。ファンや多くの芸能人は中国内の租税回避地・コルガス市(新疆ウイグル自治区)にペーパーカンパニーをつくっていたのですが、7月以降、多くの会社が慌てて解体や名義人の変更を進めている。ファンの脱税は氷山の一角なのです」と周氏は話している。