〝大学生Jリーガー〟は、何者になるのか――。神奈川大4年ながら、2027年の加入が内定しているJ1福岡で特別指定選手として存在感を放つMF前田快(こころ=22)。今年2月のデビュー戦でいきなりゴールを決め、その後は先発出場も重ねている。挫折を乗り越えた反骨心と、父から教わった「おかげさまの精神」を胸に、目指すのは誰にもまねできない「唯一無二のボランチ」だ。

取材に応じたMF前田快
取材に応じたMF前田快

 ――少年時代はどんな子供だった

 前田 やんちゃでした(笑い)。4人きょうだいの一番上で、妹2人とよくケンカして親に怒られていた。

 ――サッカーを始めたきっかけは

 前田 小学2年の時で、水泳から逃げたかったから(笑い)。幼稚園からやっていて、育成のエリートコースで週3、4回練習していた。泳ぎ終わるとゴーグルの中に涙がたまるぐらいきつかったけど、親に「やめたい」と言えなくて。別のスポーツに本気になれば乗り換えられると思って、誕生日にサッカーボールを買ってもらい、地元のチームに入った。

 ――大切にする「おかげさまの精神」とは

 前田 祖母から父に受け継がれた教えで、父は実家の古本屋を継いでいる。「100円の本でも買ってくれるお客さんがいて商売が成り立つ」と。僕も小さい頃から「サッカーができるのは周りの人のおかげ」「自分のためだけにやっているんじゃない」と言われてきた。

 ――京都サンガF.C.Uー15では挫折を味わった

 前田 小学生までは自分がうまいと思って、テングになっていた。でも、中学では体が小さく、相手の逆を突いても追いつかれ、体格差で吹っ飛ばされた。「うまいだけではダメなんだ」と思い知らされて、サッカーが楽しくなくなった。

 ――そこからプロへの道を切り開いた原動力は

 前田 エリートへの反骨心。世代のトップを走ってきた選手がうらやましい一方で「絶対に負けたくない」と思っていた。「プロになりたい」という憧れ以上に、その気持ちが大きかったと思う。

 ――福岡への加入を決めた理由は

 前田 アビスパが一番に正式オファーをくれたことがうれしかった。町田にも練習参加していたけど「本当にプロになれるのかな」という不安があった中で、いち早くアビスパが高く評価してくれた。「ここに決めよう」と思った。

 ――今年2月のデビュー戦ではいきなりゴール

 前田 最高だった。「これまで見下してきた人たちを見返してやったぞ」という気持ちもあったし、支えてくださった方々に見せたかった。結果を出して自分の価値を上げることでしか証明できない世界なので、今でも「持っているな」と思う(笑い)。

 ――大学生でJ1のピッチに立つ現状を想像していた

 前田 全く想像していなかった。僕はあまり自信を持てないタイプで、練習参加でもビビっていた。実際に飛び込んでみて、レベルの高い環境に身を置くことの大切さを感じている。経験を積んで自信をつけていく場所だと思っている。

 ――最大の武器は

 前田 ロングスロー。小学生の頃は「お前が投げるより、ボールを受けて攻めろ」と言われて封印していた。高校で先輩の横で投げたら、その先輩より飛んでしまった(笑い)。そこで封印を解いた。

得意のロングスローでもチームに貢献している
得意のロングスローでもチームに貢献している

 ――目指すボランチ像は

 前田 「唯一無二のボランチ」。見木(友哉)選手のミドルシュート、秋野(央樹)選手のパスセンス、椎橋(慧也)選手のゲームコントロール。みんなの良いところを吸収して、誰かになるのではなく「前田快像」をつくりたい。

 ――鹿島戦では鈴木優磨に詰め寄られても動じなかった

 前田 普段は物おじするけど(笑い)、ピッチに立つとスイッチが入って引けなくなる。サッカーでは自分でも怖いぐらい緊張しないので、あの時も自然と堂々と対応できた。

 ――神奈川大では、竹山団地で地域住民との交流活動にも取り組んだ

 前田 最初は「サッカーだけやらせてくれ」と思っていた。でも、1日24時間で練習は2時間ぐらい。残りの22時間の私生活や地域との関わりも全部サッカーにつながっていると気づいた。そこで人間力を磨かせてもらった。アビスパでも「チラシ配りでも何でも連れていってください」とお願いしている。

 ――福岡での素顔は

 前田 年齢が近い佐藤颯之介選手たちと仲が良くて、一緒に「ポケモンGO」をしたりする。先輩にもご飯へ連れて行ってもらっている。お気に入りは西中洲の「まる家」さん。いか姿造りやカワハギの刺し身、名物のバッテラ寿司がおいしい。

 ――8月29日のアウェー京都戦には、祖父母も応援に来た

 前田 母方の祖父は僕の試合を一度も見に来たことがなかったけど、地元の京都だったので、初めて来てくれた。母から「おじいちゃんをスタジアムに連れてこられて、親孝行ができた気がしてうれしかった」と言われたことが、何よりもうれしかった。

 ――福岡で最も影響を受けた選手は

 前田 奈良竜樹選手。あれだけ実績があるのに努力を一切怠らない。僕が疲れて帰ろうとしている時も、黙々と筋トレをしていて「ここまでやらないと、あの格の違いは出ないんだ」と衝撃を受けた。一緒に過ごした時間は最高の財産になっている。

 ――2027年から正式にプロになる

 前田 お金をもらって勘違いして、チャラチャラする選手には絶対になりたくない。プロになっても初心や人間性を忘れず、地に足をつけて戦いたい。日本代表や海外も目指していないわけではないけど、まずは目の前の練習や試合で100%を出して、圧倒的にサッカーがうまくなりたい。

 ――最後にサポーターへ

 前田 苦しい状況でも選手もスタッフも誰一人諦めていない。スタジアムに足を運んでくださることが、どれだけ力になるか身に染みて感じている。その応援に応えられるよう僕たちが結果を出さないといけない。ぜひ応援してほしい。

来年は本格的にJリーガーとなる
来年は本格的にJリーガーとなる

 ☆まえだ・こころ 2004年7月1日生まれ、京都府出身の22歳。MF。178センチ、72キロ。京都葵FC、京都サンガF.C.U―15、香川・大手前高松高を経て神奈川大に進学。2025年9月に27年シーズンからのアビスパ福岡加入が内定。26年は特別指定選手としてJ1百年構想リーグに出場し、2月の岡山戦で公式戦初得点を挙げた。背番号55。