4月30日に改革案などを発表し、局を象徴してきた「楽しくなければテレビじゃない」路線からの脱却も示したフジテレビ。SNSでは新たなキャッチフレーズが生まれるのか関心を呼んでいる。

 フジの親会社フジ・メディア・ホールディングスの株主である米ファンド「ダルトン・インベストメンツ」系の「ジャパン・アクティブ・バリュー・ファンド」は、4月16日付で公開された株主提案書で「面白くなければテレビじゃない」を強調している。

 提案書は、2022年に行った早期退職制度が優秀な社員の流出と制作能力の低下を招き、視聴率も下がる悪循環に陥ったと指摘。さらに「テレビ広告収入に頼る結果、広告スポンサーの意向を気にしながらの番組制作となり、ますます均質化した面白くない番組ばかりとなってます」とも。今こそ「フジテレビは原点に立ち返り、コンテンツ制作能力を大幅に強化する必要があります」と提言した。

 ダルトン側は6月の株主総会をもってフジHDの取締役を退任する〝フジのドン〟日枝久氏の残滓一掃を求めてきた。一方、提案書は日枝氏が編成局長時代の1980年代に掲げた「面白くなければテレビじゃない」については、そのキャッチフレーズ下で黄金時代が訪れたと評価。「テレビに『イノベーションを起こす』という情熱あふれた時代でした」が、日枝体制の長期化でフジは衰退していったという。そこで「楽しく」に変わるべく「面白く」を提案したとみられる。

「楽しくなければ」からの脱却は、そのフレーズを過度に重視してきた風土から抜けることを意味するという。X(旧ツイッター)では、制作部門の解体・再編も含めた改革に「フジらしさが消えてマジでヤバくなる」といった心配や「『母と子のフジテレビ』時代にまで戻るんですかね」とかつてのキャッチフレーズへの言及も見られる。

 フジテレビでプロデューサーなどを務めた吉野嘉高・筑紫女学園大教授の著書「フジテレビはなぜ凋落したのか」によると、「楽しくなければテレビじゃない」は81年に、開局当初の「母と子のフジテレビ」に取って代わってキャッチフレーズとなった。それは「キャッチフレーズを超えた会社の『再興規範』『憲法』あるいは『呪文』のように働き、社員の意識や番組制作を方向づけていった」という。

 日枝氏の〝退場〟とともに名フレーズも看板の座を降りることになりそうだ。