【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。経済アナリストの森永卓郎さんが先月28日に亡くなられました。僕は森永さんとは番組で共演しておりまして、その背中からコメンテーターというもののイロハを学びました。また、森永さんはステージ4のがんを宣告されて以降、「権力と戦い続けて死ぬ」と国家レベルの問題に切り込み鋭い発信を続けました。本当に尊敬する大先輩です。ご冥福をお祈りします。

 今週はそんな森永さんへの畏敬の念を込めながら、森永さんにも負けずとも劣らない切り込み力を持った男が物語の核となる映画「リアル・ペイン~心の旅~」(1月31日公開)を紹介します。

 今作は第97回アカデミー賞(3月2日授賞式)の脚本賞と助演男優賞にノミネートされた大注目の一作です。疎遠となっていたユダヤ人のデヴィットとその従兄弟のベンジーが祖母の遺言により再会し、ポーランドを巡るツアーに参加。衝突を繰り返しながらも、自分たちの生きづらさに向き合うようになる。そんな姿を描くロードムービーです。

 今回の注目は何といっても、助演男優賞ほぼ確定とも言われるベンジー役のキーラン・カルキンの演技です。ベンジーは、場を凍らせるような発言をよくするちょっと配慮の足りないやつなんですけど、もうお芝居とわかっていても、見る者を本当にイライラさせるんです。スクリーンで見ているだけなのにすごく引き込まれて腹が立つ。それくらいお上手なお芝居でした。しかも台本はあるんですが、細かいところはアドリブだというんですからもうアッパレです! 脚本、ストーリーももちろん素晴らしいのですが、この映画はもう俳優の演技で見る映画だと思いましたね。

 場の空気を乱すベンジーですが、遠慮のない発言が実は結構物事の本質を捉えているんですよね。このベンジーに心動かされて、映画後半ではみんな思っていたけど言えなかった本音で会話をし始めるんです。それが映画の大きな転換点となります。

 本音と建前という言葉がありますが、私たちは本当の気持ちをそのまま言葉に出すということを実はあまりしていないのではないでしょうか。自身の死期を悟り、後の世代のため忖度のない発信で最後まで戦い続けた森永さんは本当の意味でのエコノミストで、偉大なコメンテーターだなと思います。こんな時代だからこそ見てほしい一作です。ぜひご劇場でご覧ください。