今月9日に行われたピン芸日本一を決める賞レース「R―1グランプリ2024」の決勝に、史上初のアマチュア勢として出場した芸人が「どくさいスイッチ企画」だ。会社員を続けながら〝1人コント〟を磨き上げたどくさいスイッチ企画は、学生落語の大会や、アマチュア芸人に向けたお笑い賞レースで全国優勝した経験を持つ実力者でもある。未曽有のルートで賞レース決勝に上り詰めた本人に、肌で感じた〝夢の舞台〟についてインタビューした。

 ――まずは「R―1グランプリ」決勝、お疲れ様でした

 どくさいスイッチ企画(以下、どくさい)ありがとうございます。

 ――昨年までは「R―1グランプリ」の準々決勝進出が最高成績ということで、今年一気に決勝まで躍進されました。ご自身の中で手ごたえはありましたか?

 どくさい そうですね、去年までは結構同じ戦い方をしてしまっていたんですよ。1、2回戦では同じネタをやって、その後に勝負ネタをやる、って感じで。ただ結局それで2年連続準々決勝で落ちちゃったので、今年はとにかくいろいろチャレンジしようと決めていました。毎回ネタを変えたり、準々決勝を東京で受けたりもして。試したことがうまくはまったのかなとは思います。

 ――決勝進出者発表の様子を映した動画では、驚きと喜びで涙する姿も話題になりました。今回の出場に対する反響はありましたか?

 どくさい すごく反応があってびっくりしました。あの時は〝決勝進出〟であって、優勝したわけでも何でもなかったんですけど…。久しく会ってなかった知人から連絡が来たり、ツイッター(現「X」)のフォロワーが2000人増えたり。こんなに反響が大きいんだとは正直思いました。

決勝を振り返るどくさいスイッチ企画
決勝を振り返るどくさいスイッチ企画

 ――これまでも学生落語やアマチュア芸人に向けた様々な大会の〝決勝戦〟を経験されていると思いますが、「R-1」の決勝はいかがでしたか?

 どくさい 動いている大人の数は違いましたね…。明らかに人が多くて、「テレビ番組ってこんなに人がいるんだ」って改めて思いました。もう今後、一切テレビの文句は言わないようにしようって思うくらい、本当にすごかったんですよ(笑い)。練習やリハーサルも丁寧にされているし、僕らのケアをしてくださる方もたくさんいらっしゃって。出場する側としてはこれ以上ないコンディションで臨めました。

 ――他のファイナリストの方は決勝前にどのような交流を?

 どくさい とにかくこの「R―1」を盛り上げようという話はしていました。あとはこのメンバーになった縁ということなのか、プロの芸人の皆さんも同じ1人のチャレンジャーとして僕に接してくださって。

 ――一体感があったということですね

 どくさい そうですね、プロ同士でライバル心はあるでしょうし、僕にも対抗心があったと思いますけど…。もちろん僕も負けたくない気持ちはありましたし。ただ〝それはそれ〟として、いい大会にしようという思いが強かったように思います。

ただ1人アマチュアとして決勝に進出
ただ1人アマチュアとして決勝に進出

 ――今回どくさいさんの出番はラストとなる9番目でした。出演までの間もご自身の「X」を更新されていましたよね?

 どくさい 基本的には楽屋で待機して、出番の直前に呼ばれる感じだったので。そこで流れているテレビ画面を見ながら投稿していました。他の芸人さんも真剣に状況を見つつ、いろいろと話をされていましたね。

 ――トリ、ということ自体には緊張もあったのでは?

 どくさい いや、めちゃくちゃやりやすかったです。会場のお客さんがいろんなパターンのお笑いを見た後の出番だったので、コントの〝見方〟を分かっていただけたというか。その前に出られた方々のネタをふまえて、「コントはこう見るんだな」と理解されていたのはすごく楽でした。

 ――どくさいさんの中で「やりきった」感覚はありますか

 どくさい そうですね…。もちろん勝てなかったことは悔しいし、2本目もやりたかったという気持ちはあるんですけど。それでも1本目としての自己ベストは出せたのかなと思っていますね。

 ――決勝で披露したネタ「ツチノコ発見者の一生」にはどのような思い入れが?

 どくさい あれは準々決勝でやったネタなんです。本当は準決勝でやったネタを決勝でもやるというのがセオリーなんですけど、自分自身一番このネタをやりたかったというのはありますね。あとはネタとしても結構特殊というか、コント中にすごい速さで時間を経過させるっていう構成なので。他の出場者との違いを見せるとしたらこのネタかなと思って選んでいました。

 ――今回のネタの最後では最後正座で一礼をされていました。SNS上では「さすが学生落語出身」という声もありましたが…

 どくさい 実は落語研究部出身であることが長所でもあり短所でもあると思っていて…。道具や音響を使わずにネタを作れる反面、逆にそれらを使うネタが全然思い付かないんですよ。ネタ中に何かを入れるという発想が全然ないので、すごく狭い分野でネタを作り続けているというのは課題でもありますね。それと終わり方に関しては、ネタの最後にしりもちをつくので、正座をして終わろうとなんとなく流れで決めていまして。周りの方が「落語みたい」と言ってくれたので、そういうことにさせてもらおうかな、くらいの気持ちでやっています(笑い)。

 ――採点結果が出た後、審査員のバカリズムさんには、「ツチノコ発見者が『めざましじゃんけん』に出演するくだり」がピークであったという指摘を受けました。厳しい意見にも感じましたが、スッと受け入れられたのですか?

 どくさい おっしゃる通りだと思いましたね。確かにあのネタは「めざましじゃんけん」と最後がピークで、その間をどうつなぐのかということを試行錯誤しながら本番まで持って行ったんです。ですからピークがそこにあるというご意見はただただ全うというか。逆にピークだと思っていただけたことがうれしかったくらいで。

 ――うれしかった、と言いますと…

 どくさい 少なくともそのピークまでは、ちょっと面白いと思ってくださったのかなと。自分が盛り上げたいと思っていた部分がちゃんと伝わっていたというのはありがたかったです。

審査員のコメントもポジティブに受け取った
審査員のコメントもポジティブに受け取った

 ――最終決戦に進める3位までは12点差でした。ボーダーラインまでの距離はどのように感じられていましたか?

 どくさい すごい高い壁には感じたんですけど、どういう壁なのかということはなんとなく分かってきたような気がしています。例えばファイナルステージに進んだ方々だと、(街裏)ぴんくさんの熱量や、吉住さんのネタの詰め方、ルシファー(吉岡)さんの最適な言葉選び・表情選びがすごくて…。そういった部分を自分のネタと比較すると、映像で見返しても確かに差があったんですよね。だからこそそこを課題としてブラッシュアップしていって、この12点を詰めるということを目標にしようと思ってます。

(後編では「R―1」挑戦に対する家族の理解、改めて感じたという「R―1」の夢についても話を聞きました)

 ☆どくさいすいっちきかく 1987年生まれ。会社員。大学生時代に全日本学生落語大賞で策伝大賞(最優秀賞)を受賞し、就職後も社会人落語・お笑いの分野で精力的に活動。「R―1グランプリ2024」ではアマチュアとして史上初の決勝に進出し、同率4位の成績を収めた。