ピン芸日本一を決める賞レース「R―1グランプリ2024」(フジテレビ系、3月9日午後6時30分)で、4年連続の決勝進出を果たしたお笑い芸人の寺田寛明(33)が本紙インタビューに応じた。毎年決勝での最終順位を上げ、〝4度目の正直〟も期待される寺田。芸歴制限撤廃への率直な心境から、ピン芸人を目指すきっかけまで、じっくり語ってもらった。

 ――4年連続の決勝進出となりました

 寺田 4回目ではありますけど、芸歴制限が解除されてから初めて決勝に行くんですよ。制限前は決勝に進めていなかったですし、解除が分かった時は「(決勝に)行けなくなる感じかな…」みたいな不安がありました。しかも毎年「これ以上のものは作れないな」って思っていたので。それでも頑張って作っていたんですけど、今年は準決勝の2週間前までこれだ、っていうネタができなくて。正直かなりヒヤヒヤしましたね。

 ――芸歴制限がなくなったとともに、寺田さんにとっても今年が〝ラストイヤー〟ではなくなりました。

 寺田 優勝しないといけなくなっちゃったな、とは思いましたね。制限ができた時には、「あと4回」ってタイミングで。4年頑張った後は少し違う活動をしようかなとも考えていたんですけど、終わりがなくなりましたから。「R-1」に出たくて芸人を始めたっていう部分はあるので、うれしくもあり、いつまでやれるんだろうっていう不安もあり、って感じです。

 ――今回の決勝進出について、周囲からの反応は?

 寺田 ちゃんとLINEは来るんですけど、〝温度感〟は下がりましたよ(苦笑)。4回決勝に行くことの難しさは分かってもらえているんですけど、逆に周りに「決勝のタイミングでおめでとうって言っていいのかな」って思わせてしまっているというか。そろそろもっと良い結果を出さないと、っていう気持ちはありますね。

率直な心境を語る寺田
率直な心境を語る寺田

 ――過去3年間も決勝での最終順位は10位→6位→3位とステップアップされています。決勝の舞台には慣れたのですか?

 寺田 今んとこ慣れてないですね…。去年の決勝が一番ネタの中で噛んでたんで。予選には慣れてきた感覚がありますけど、決勝だけはすごい特殊じゃないですか。自分の紹介映像が流れた後に、幕が開いてネタをやるなんてことは普通ないですから。というかいまだにテレビカメラも苦手なんですよ。

 ――カメラが苦手、と言いますと…

 寺田 去年は決勝の2番手として出て、暫定1位になってからは〝ラス3〟くらいまで「暫定席」でカメラに抜かれたんですよ。本当にどこを見ていいのか分からないままいたら、放送を見てた人に「1回も目が合わなかった」って言われて。

 ――とはいえこの好成績は仕事につながったのでは?

 寺田 いまだにテレビ関係の仕事はほぼないですね。バラエティで活躍できるタイプじゃないという自覚はあるし、そこのあきらめみたいなものはあるんですけど。ただ去年決勝で3位になってからは少し違いました。本を出す話が来たり、ライブハウスでトークイベントをする機会が増えたり、あんまり他の芸人がやってない仕事が増えだした印象はあります。

 ――活躍しやすい場が提供されたということでしょうか

 寺田 周りに分かってもらえるようになったのかなとは思いますね。好きな大喜利・アイドルの仕事や、文章を書く仕事が増えて。それに依頼があった本も「絵本」なんですよ。普通絵本って絵が描ける人が出すものだけど、俺は描けなくて。だから文字のフリップでネタやってるんですけど…(苦笑)。〝絵が描けない人間の絵本〟って初じゃないかと思うし、そういう意味でも他にはない仕事ですよね。

 ――一方で本業のピン芸にも注力されています

 寺田 元々子どもの頃から見てたお笑いがピン芸ばっかりで。芸人では珍しいって言われるんですけど、ゴールデンタイムのバラエティーをほぼ〝通って〟なくて。以前番組の企画で、原口あきまささんにものまねをしてもらいながら、大喜利の回答を代読してもらうことがあったんですけど…。元ネタの江頭2:50さんがどういう人かちゃんと分かってなかったんですよ。『めちゃイケ』も見てなかったから。

 ――それは確かに珍しいかもしれませんね

 寺田 お笑いへの「入り口」も嘉門達夫さんだし、その後に見ていた「爆笑オンエアバトル」でもはなわさん、陣内(智則)さん、ユリオカ超特Qさんとかのピン芸が好きで。結局言葉のお笑いが好きなんですよね。動きというよりはワード・歌の方が好きだし、ボケツッコミよりも「面白いせりふを言って終わり」の方が好みというか。

お笑いとの出会いも〝ピン芸〟からだという
お笑いとの出会いも〝ピン芸〟からだという

 ――では歴代のR-1王者の中で憧れだった存在は?

 寺田 ネタの感じで言うとほっしゃん。(星田英利)さんとか、中山功太さんですね。ファイナリスト経験者ではヒューマン中村さんもめちゃくちゃ好きで…。

 ――今年のR-1からはレジェンドのピン芸人も復帰されましたが

 寺田 実際準決勝では出番がヒューマンさんの前で、直接対決みたいな形になったんですよ。結果的に決勝には進めましたけど、決着がついたって感覚はなくて…。

 ――と、言いますと…

 寺田 言い方は難しいですけど、「自分たちに向いた展開」だったような印象もあるので…。3年間で客層も入れ替わっているから、制限前のファイナリストの方にとってベストの客層ではないし、フェアな対戦ではなかったのかなっていう感じがしています。

 ――その中で今回決勝に進んだファイナリストでは誰を意識している?

 寺田 結構友達はいるんですよ。サツマカワ(RPG)とか(「トンツカタン」の)お抹茶とか、仲の良い周りの芸人がいっぱいいて。

 ――記者会見でもお抹茶さんの決勝進出に涙したことを告白しました。

 寺田 この3年間「お抹茶がすごい」って言い続けていたし、来てくれてうれしいって気持ちはありましたね。初めてお抹茶が準々決勝に進出した時からネタがすごすぎるので、優勝を争うって意味では一番危ない存在だなとは思います。

決勝には実力者が集結
決勝には実力者が集結

 ――ではライバルということに…?

 寺田 でもジャンルは全然違うんですよね。やってることが真逆なんで、ライバルかと聞かれるとちょっと違うかな…。ライバルという意味では、今回の決勝では1個前(の出番)がkento fukayaさんなんですよ。今回の出場者の中では、唯一「モニター使用ネタ」でかぶっていて、一番連続しちゃいけなかったところがしちゃったというか(苦笑)。前後で分かりやすく比較されるだろうし、超えないとどうにもならないなと思ってます。

4度目の決勝を目前に控える
4度目の決勝を目前に控える

(後編では他のファイナリストに対する印象や、理想の〝チャンピオン像〟について深掘りしました)

 ☆てらだ・ひろあき 1990年10月6日生まれ。埼玉県出身。学生時代からピン芸を中心に活動し、14年からマセキ芸能社に所属。2021年以降、4年連続で「R-1グランプリ」の決勝進出を果たした。アイドルマニア・現役塾講師としても活動し、4月には絵本「故事成語ツッコミ事典 もしも言葉のレビューサイトがあったら」が刊行される。