“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回は、おっとりした雰囲気の女性が実は話を主導していく、独特の“唯一無二の世界観”を持つ男女コンビを紹介する――。

“不自然な自然体”とでも言うべき、不思議な世界を醸し出す男女漫才コンビです。

【プロフィル】
 コンビ名‥マタンゴ
 所属‥マセキ芸能社
 結成‥2021年4月15日
 女性‥斉藤アー
 生年月日‥1996年7月13日
 男性‥高橋鉄太郎
 生年月日‥1992年12月18日

 滑舌がしっかりしているので、聞き取りにくいなどのしゃべりに関する不安要素は全くありません。しゃべるスピードはゆっくりで、しかもしっかりしている。むしろ、ここまで細部まできっちり聞き取れる漫才師は珍しいと思います。

 マタンゴのすごいところは、掛け合い自体はスタンダードなのに存在感があるところ。何か新しいものを感じます。主に漫才をされていて、ネタでは女性の斉藤アーさんが話し出すことが多い。話は自然に進んでいきますが、自然体のようで不自然なのです。

 分かりにくいと思うので、どういうことか説明します。まず、しゃべる時の表情がとてもしっかりしてるんです。でも考えてみると、会話する時にしっかりとした表情で、なおかつゆっくり、しっかりしゃべる、なんてことは普通はあまりない。だから違和感を抱いてしまうのだと思います。

 また存在感のある語り口調は、役者が演じているようでもあります。しっかりした演技と置きに行くような語り口調。演技でしゃべっているようでもあります。そのせいか最初はあまり人間味が伝わってこないのですが、話していくにつれて深みを感じさせる。なんだか不思議な気持ちにさせられます。

 またマタンゴは、男女コンビということをあまり感じさせないネタをやる。「男女で恋愛関係にある」とか「片方が片思いしている」など、男女コンビがよくやるネタは一切やらない。男性同士、もしくは女性同士でも成立しそうな話を違和感なく進めていく台本力があります。

 ネタの冒頭に特徴があります。斉藤アーさんが「ちょっと、あなたに直してほしいところがあるのよ…」とか「私、これから毒舌キャラになろうと思うのよ…」、または「私、グルメなの…」などなど。ひと言目に、漫才のテーマになりそうなことを言う。コンビの関係性よりも、一方的な話を相方の高橋さんに聞かせるという形のネタが多いんです。

 ちょっとセリフのやりとりを書いてみると、「私グルメなの…」「食にこだわりがあるんだ」「今日はおいしいご飯の話でもしましょうよ」「いいね。僕、ご飯食べるの大好きだから、おいしいご飯、たくさん教えてよ」。

 この会話のやりとり、まるで中学校で習う英語の教科書みたい。でも普段、こんな会話はしませんよね? こういうところが非日常的なんだと思います。

 また、おっとりしている雰囲気の斉藤アーさんが受け身でないのも面白いところです。聞き上手なキャラクターと見せかけて、ほとんどが自分発信のセリフになっている。

 日常会話に近づけるなら、本当は男性きっかけで始まる方が自然なんです。例えば「ご飯食べるの好きだよね」「そうね私、グルメなの」「ああ、食にこだわりがあるんだ」「そうね」「どんなご飯が好きなの?」。こんなふうに相手が聞いてきて答える流れの方が自然です。

 でもあまりにも自然な流れの漫才だと、数多い芸人の中で残っていけないのも事実。本来は話を先導しなそうな斉藤アーさん主導で話を進めるスタイルが合っているのでしょう。

 今までにはあまり見たことがない、マタンゴの唯一無二の世界観にお客さんも引き込まれていく。高橋さんの自然体の受け答えで、斉藤アーさんがより引き立ち、笑ってしまいます。

 昨年のM―1グランプリでは3回戦まで進出。現在開催中の今年は、1回戦を突破して2回戦に進出しました。独特の世界観の漫才、ぜひ見てほしいと思います。

 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。