【取材の裏側 現場ノート】6日に復帰したオートレーサー・森且行が他の選手と決定的に違うのは取材対応時の振る舞いだ。遠目から見ても分かるオーラはもちろんのこと、その所作は見習うべきところが多い。
コロナ禍前、SGでは森の周りを記者が10人以上で囲むこともよくあった。囲み取材で選手は質問者の目を見て答えるか、あるいは誰とも視線を合わせず、言葉を選びながら遠くを見ていることが多い。だが、森の動きは独特だ。
語り始めてしばらくすると記者一人ひとりの目を5秒ほどジッと見て視線を次第に動かしていく。まるで写真撮影時に「右下、次は真ん中、今度は左上」と言われているかのように語りかけ、時に笑みを交えて相好を崩す。勝利した時だけでなく、展開を悪くして惨敗した時でも表情は豊か。喜びを共有させるだけでなく、悲哀も感情を込めて訴えかけるこの目力は“前職”で習得したものだろう。女性ファンが推しのアイドルに心揺さぶられるのもよく分かる。
2000年代後半のこと。レース開催中、本紙1面記事にオートレースとは全く別件で森の名が出て怒らせてしまったこともある。記者はその節は取材現場に出向いてなかっただけに、いつ頭を下げに行くべきか考えていたところ当日にまさかの落車。さすがにこの時ばかりは「森に取材拒否を食らったら今後、キツいよなあ…」と頭を抱えたのはよく覚えている。
その数日後、取材機会が訪れた際にオドオドしながら森のロッカーに出向くと、意外な答えが返ってきた。
「先日は申し訳ございませんでした」
「何のこと?」
「1面記事のことで…」
「ああ、アレね。別にいいですよ」
「また取材でロッカーにお邪魔してもよろしいでしょうか」
「もちろん! またドンドンきてよ」
最後の一言が敬語でなかったのは彼なりの優しさだったと勝手に思っているし、心救われた瞬間でもあった。
SG初Vを果たしてから2年5か月。新たな意味ある白星を飾った後の振る舞いを楽しみにしている記者は多い。











