テレビ朝日社員で同局系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜午前8時)コメンテーターの玉川徹氏による、事実に基づかない発言の波紋が広がっている。SNSでは29年前に同局を揺るがせた「椿事件」への言及も少なくない。

 安倍晋三元首相の国葬で菅義偉前首相が読み上げた弔辞が多くの人の感情をゆさぶり、話題に。玉川氏は同番組で「電通が入っている」と演出を匂わせたが、発言翌日の9月29日の放送で「事実ではない」として謝罪した。その後も玉川氏への批判は止まず、4日にテレビ朝日が懲戒処分を発表。5日の「モーニングショー」では番組の顔であるフリーアナの羽鳥が二度も頭を下げた上、玉川氏には復帰の際に説明と再度の謝罪を行うよう求めた。

 ツイッターユーザーからは「今回の件は椿事件に匹敵」「椿事件の戒めは生きていない」と過去の騒動と並べるツイートが相次ぎ、「椿事件に続く『玉川事件』」と断じる声も流れた。

 1993年、テレビ朝日の椿貞良報道局長(2015年死去)が民放連の会合で、政権交代が起こった同年の総選挙の報道について「反自民の連立政権が生まれる手助けになるような報道」をしようと局内で話し合ったとの趣旨の話をしたことが一部報道で明るみに出た。自民党などが発言を問題視。放送法違反との声も上がる中、椿氏は国会に証人喚問され、郵政省(現総務省)がテレ朝を厳重注意する事態に発展した。

 この件ではテレ朝の社長も国会に参考人招致された。日弁連は会長声明で、国会に関係者を呼んだことについて、十分な討議や検討を経ないまま行ったことが「慎重さを欠く」とし、「報道を委縮させるおそれ」があると指摘した。「言論の自由」と「政治介入」がせめぎあう形にもなった。

 玉川発言には自民党議員からも批判のツイートが複数あり、テレ朝の会長、社長の責任に言及する声も。折しも臨時国会が開会中とあって、取り上げる議員が出ても不思議ではない。

 玉川氏への処分を決めた背景には「椿事件」のような政治問題化を避けたいテレ朝側の意向があるのか…。