日本国内では2日、新たに278人の新型コロナウイルス感染が確認され、1日の確認数として最多となった。ウイルスという見えない敵に囲まれた非常事態で、東京都教育委員会は、都立の高校などの休校措置を5月6日まで継続することを決めた。新受験生らが困惑の生活を送る中、大手予備校で“ヤンキー先生”としてカリスマ的人気を誇った吉野敬介氏(53)が6日からユーチューブで「無料予備校」を開設することが報じられ、話題になっている。その吉野氏が前代未聞の挑戦について本紙に改めて意気込みを語った。

 東京都は2日、都内で新たに97人の新型コロナウイルス感染が確認されたと発表した。さらなる拡大も懸念されるため、休校延長を決めた都立の高校がGW明けに通常通り授業再開となるかは、不透明だ。当然、そんな状況が続けば、教育格差が生まれることは間違いなく、大学受験を控える高校3年生にとっては致命傷にもなりかねない。これは東京のみならず全国的な問題だ。

 そんな状況下で心強い味方となりそうなのが、吉野氏が6日に開設する無料のユーチューブ予備校「ただよび」だろう。大学受験用の授業を10分単位で、1日1本のペースで配信していく。

 暴走族の元特攻隊長から大学へ進学、代々木ゼミナール、東進ハイスクールなどの大手予備校で古文のカリスマ講師として30年近く活躍したが、3月末に東進を退職したばかり。自身の教え子で、東進時代の同僚だった英語講師の森田鉄也氏とともに「ただよび」を運営する。

「教育に金がかかりすぎて、階級社会になっている」と嘆く吉野氏は「昔から『教育の無償化』が夢だった。勉強を頑張ったヤツが良い大学に受かるとかはいいと思う。でも、大学に入るまでは、平等じゃなきゃいけないんじゃないか。今は階級社会になっていて、お金持ちは教育にお金をかけられる分、受かりやすい。お金がなくても大学に受かることができるようにしたい。それを『ただよび』で実現したい」と意気込む。

「僕の一番好きな新聞、東スポで伝えたい!」とアピールする吉野氏。予備校の授業でも、東スポネタで生徒の興味を引くことがあったという。

 英語を担当する森田氏はすでに1年以上、教育系ユーチューバーとしても活動している。

「東進の授業は予備校業界でトップですし、僕らは無料とはいえど、ユーチューブらしい授業の見せ方も大事にしますし、質も落とさない」と自信を見せる。

 現役の高校3年生の大学受験やその準備にかかる費用は、年間で平均80万円といわれ、浪人すればさらに増額して平均100万円。これを工面するのが大変な家庭も少なくない。

 吉野氏は「俺も裕福な家庭に生まれてきたわけじゃないし、中学からはグレて暴走族に入ってヤンチャしてきた。最後に誰かに恩返しというか、みんなに無料で授業を見てもらいたい。もうお金はいいかな。遅いけど、去年ぐらいからユーチューブという存在の大きさを感じて『これだ!』って思いましたよ。これなら生徒が無料でできるのかな、と」と明かす。

 当然、在宅でも授業を受けられ、コロナ感染拡大のいまなら強い味方だ。森田氏が「ユーチューブであれば、ネット環境さえあれば無料。スマホさえあれば、いつでもどこでも授業が受けられる。それが魅力ですし、もうそういう時代だとも思います」と力を込めれば、吉野氏も「コロナで外出できないだろうけど、古文は俺が教えてやるから安心しろ」と“ヤンキー口調”で宣言した。

 もっとも“無料”だからこその課題はある。吉野氏は「通常の予備校は親が高い授業料を払っているわけだから、生徒も『授業を受けなきゃいけない、頑張らなきゃいけない』と思う。無料のユーチューブ授業だと『いつでもいいや』と思ってしまうかもしれない。飽きさせないように工夫しなければいけないので、誰でも入りやすい分、難しい」という。

 吉野氏はユーチューブに慣れ親しむ世代に90分の授業は集中が続かないと分析。「ただよび」を10分単位にしたのも“濃縮した授業”が効果的だと踏んだからだ。

 現在は吉野氏と森田氏の2人だが、講師陣は増やしていく予定。将来的にはユーチューブ講師オーディションを開催することも思い描いている。

 前代未聞のユーチューブ予備校が世間に受け入れられるか注目だ。