昨年8月に肝硬変と食道がんのため死去した本紙OBで芥川賞作家・高橋三千綱さん(享年73)の“遺稿”が出版される。
「枳殻家(からたちけ)の末娘」(19日発売、青志社)は高橋さんが初めて挑んだエンターテインメント官能文芸作品。28年前にサンケイスポーツで連載していたものだ。
編集人の阿蘇品蔵氏は「三千綱さんは生前、奥さんと娘さんに『あれを本にできないのは残念だから、何とかならないかな』と言っていたそうです。遺品整理をした時、この原稿が出てきて、娘さんが『そういえば、お父さんが単行本化したい官能小説があるって言ってたのは、これのことじゃないかな』と思い出したんです」と明かす。
高橋さんがなぜ「枳殻家――」にこだわっていたかというと、故山口瞳さんがこの連載を称賛していたからだという。
高橋さんが“ポルノ小説”を書くことをちゅうちょし、山口さんに相談。「いいじゃないか」と後押しされ連載。高橋さんが礼状を送ったところ、山口さんから以下のようなはがきが届いた。
「小説は、やはり違うなあと思って愛読しました。『ポルノを書いてはいけないなんてことはない』この点では珍しく五木寛之さんと意見が一致します。貴方の書くものは力感に溢れ、すがすがしい感じもあると常に思っています」
このはがきは高橋さんの宝物となった。
前出の阿蘇品氏は「私と娘さんと編集者の3人で精読し、抜けている箇所は国会図書館で集めました。本としてどんな役割を果たすか考え、遺志を継いで書籍化しました」と言う。
また、高橋さんと交流があった芥川賞作家の西村賢太氏は刊行に際し、「本作を『サンケイスポーツ』紙に連載時の氏は、四十五歳。円熟の壮年であり、また小説家としてもデビュー二十周年を間近に控えた、まさに脂の乗りきった時期である。それかあらぬか、後年の病を得てからの繊細で巧緻な短編群に比し、ともすれば溢れる気力と体力とで良くも悪くも文章を押しきっている部分も見受けられるが、けれど文句なしに面白いエンターテインメントである。かような作品が没後に再び陽の目を見ること自体を、一読者として大いに喜びたい」と寄せている。












