トーンダウンの理由とは――。体操の五輪個人総合2連覇・内村航平(32=ジョイカル)が、東京五輪予選会を兼ねたNHK杯(長野・ビッグハット)の公式練習後に取材に応じ、世間から逆風を浴びる東京五輪について言及。開催を推進する昨秋の〝激熱メッセージ〟から一転し、「もう僕の中で考えないようにしています」と達観の境地を口にした。

 昨年11月の国際交流大会の閉幕セレモニーでは「開催できないではなく、どうやったらできるか?を考え、どうにかできるように考えを変えてほしい」と語り、大きな反響を呼んだ。五輪開催派からは「よく言った」と称賛される一方、五輪反対派からは「五輪をやりたい選手のエゴだ」と痛烈な批判を浴びた。

 内村としてはアスリートとして率直な気持ちをストレートに発信したに過ぎなかったが、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長や東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長、さらに東京都の小池百合子知事ら政治家に都合よく利用される度に〝風評被害〟も浴びてきた。

 その後、新型コロナウイルスの感染状況は悪化。男子テニスの錦織圭(31=日清食品)は「死人が出てまでも行われることではない」と言い、アスリートからも開催に慎重な意見が出るほどになった。そうした中で、状況が比較的落ち着いていた半年前の発言だけが独り歩き。さすがに対応しないわけにはいかなくなったのだろう。この間に考え抜いたという内村は「選手で決められることじゃない。そこを議論しても僕ら選手には変える力がない」と強調。さらに「僕は好きで体操を始めてここまでやってきた。まず体操選手として目の前の練習と試合を全力でやるだけ。議論しているヒマがあったら練習を」と言い切った。

 もはや東京五輪開催の有無を超越した境地。とにかく種目別鉄棒での五輪出場権獲得に全てをかけているが…果たしてどうなるか。