名曲「ボヘミアン」で知られる〝女性ロック歌手のレジェンド〟葛城ユキさんが27日午後、腹膜がんのため都内の病院で死去した。享年73。

 ステージ4と分かり昨年4月から10か月に及ぶ闘病生活を送り、先月17日に夢グループ主催コンサート「夢スター春・秋」でステージ復帰。千葉県内の2か所で昼と夜の部に出演し、米女優ベット・ミドラーの名曲「ローズ」を披露していた。

 夜の部の公演前には囲み取材。入院中は、人と会えない精神的な苦しみと体の痛みで〝逃げ出したい〟心境だったそう。そんな葛城さんの支えとなり、ずっと頭から離れなかったのがファンからの声援だ。「復帰宣言しましたから。帰る義務があり責任があるので、それで頑張れましたね」

 もう1つの励みが、女だらけのフェス「NAONのYAON!」だった。昨年初出演したときにもらった「来年もぜひ」というオファーが、〝1年後には必ず元気になって出よう〟という気力に。あいにくそれは叶わなかったが、今年4月の同フェスでは、後輩女性ロッカーたちが「ボヘミアン」を大合唱しエールに代えた。

 葛城さんはこの日、昼の部のステージ後に思わず「やっぱりステージはいいね」とつぶやいたという。どんな気持ちで歌ったか聞かれると「自分への今の心境と、お客様の中に、いまつらい目に遭ってる、いろんなことで大変苦しんでる方がいらしたら〝どうぞ元気になっていただきたい〟と、両方の気持ちで歌いました」

 体調は本人も「しんどい」と言うほどなのに、観客への気遣いまでみせた。事実、囲みでの受け答えはか細い声だったが、ステージでは力強く歌い上げる圧巻のプロ魂を見せた。

 復帰舞台で選んだ「ローズ」は、原曲に「私の気持ちを取り入れた日本語詞」を入れ、長年歌い込んできた曲だ。「どんなことがあっても必ず春がやって来る、長い冬はないということを言いたかったんですね。(中略)どんなにつらくてもしんどくても、頑張っていけば必ずそこには春がやって来て、大輪の花が咲くことを信じて、頑張りましょうという…。それを皆さんにず~っとこの曲で伝えてきてた」という。

 この日は「自分に言い聞かせるみたいな詞」が自身の状況と重なり、本人も感慨深げ。さらに取材中は、独特の言い回しで報道陣を笑わせる余裕もみせていたのだが…。合掌。