31日投開票の衆院選島根1区に名前の読みが同じ「かめいあきこ」氏2人が立候補し、陰謀論まで持ち上がる事態となっている。

 島根1区は、自民党細田派会長の前職・細田博之氏(77)に対し、前回は比例復活した立憲民主党前職・亀井亜紀子氏(56)が挑む一騎打ちの構図だった。ところが公示直前の今月15日、無所属新人の亀井彰子氏(64)が名乗りを上げたのだ。

〝あき〟の漢字こそ違うが、読み方は同じ。地元政界関係者は「彰子氏は完全なダークホース。三つどもえ、しかも〝ダブル亀井〟で名前の読みも同じだなんて、誰も予想していなかった」と目を丸くする。

 投票用紙に「亀井」や「あきこ」とだけ記入された場合、選挙管理委員会は投票先が分からないと判断する可能性が高い。その場合、公職選挙法では「案分票」とし、得票数に応じ2人の亀井氏へ振り分けることになる。

 陣営筋によれば、亜紀子氏は選挙ポスターやチラシを急きょ、下の名前の漢字「亜紀子」を強調するデザインに差し替えたという。かたや彰子氏のポスターは、漢字の姓名などが手書き、顔写真の代わりに似顔絵と手作り感タップリ。しかも選挙区内でポスターを掲示した場所はわずかで、「選挙公報には載っていたが、実際に姿を見たことがない」とある松江市民は語る。

 選挙区内やネット上では「裏がある」「〇〇(政党や政治家名)が操っている」といった陰謀論が飛び交い、ものものしい雰囲気に。同姓同名の候補者といえば、特定の候補者を落選させる常とう手段として使われる。9月にはロシアでも、サンクトペテルブルク市議選に同姓同名の3人が立候補し、騒ぎになった。

 ただ地元政界関係者いわく「陰謀の事実は全く確認できなかった。同姓同名は偶然としか言いようがない」。後から立候補した彰子氏は岡山県出身だが、いわゆる〝落下傘候補〟ではなく、何年も前から松江市に住み、以前は教職に就いていたという。

 当選10回の細田氏は、直々に選挙区内を回り運動量を上げ、選挙戦をリード。対する亜紀子氏には、公示日(19日)の第一声に立民の枝野幸男代表が駆け付けたほどで、浮動票や女性票を掘り起こす展開だ。

「同情票が集まるのではと、今回の騒動は亜紀子氏にとって追い風になっているようだ。となると、ますます陰謀の意味がなくなる」と前出関係者。彰子氏は選挙戦最終日の30日、松江市内で個人演説会を開き主張を伝える予定だという。