立憲民主党の枝野幸男代表に小泉純一郎、細川護熙両元首相らの原発ゼロを訴えるグループから強烈な突っ込みが入った。枝野氏は15日、菅政権に対する内閣不信任決議案で1時間28分に及ぶ演説を行い、自らが政権を取った際の“所信表明”を披露したが、その裏で「党綱領と矛盾している」「公約の原発ゼロは実質不可能ではないか」と公開質問状を突き付けられる事態となっているのだ。

「枝野さんは原発、電力会社が倒産してしまうから、原発をすぐに止められないということなんでしょうが、止めない限り、ゴミは出続ける。ニワトリが先か、卵が先かではなく、ニワトリを先にしないと卵は生まれ続ける。枝野さんがそこを理解していないことにがくぜんとしている」と話すのは、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)の木村結事務局次長だ。

 原自連は2011年の東日本大震災の原発事故をきっかけに原発ゼロと自然エネルギー推進を掲げる個人や団体の集まりで、城南信用金庫の吉原毅顧問を会長に小泉純一郎元首相と細川護熙元首相が顧問を務める。原発事故から10年となった今年3月の集会には菅直人、鳩山由紀夫両元首相も駆け付け、原発ゼロを訴えていた。

 その原自連が看過できないと差出人に小泉氏や細川氏の名前が入った公開質問状を送った相手が枝野氏だ。問題となったのは枝野氏が今年2月、原子力政策について、西日本新聞のインタビューに「原発の使用済み核燃料の行き先を決めないことには少なくとも原子力発電をやめると宣言することはできない」「皆さん道筋を示せというが、道筋を示すのは無責任」などと答えていたことだ。

 後日、この枝野氏のインタビュー発言を聞いた小泉氏を含めた原自連幹事会はあきれ返ったという。というのも立民は昨年9月に発表した党綱領で「私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します」と掲げていたからだ。

 枝野氏への公開質問状では「貴殿の使用済み核燃料の行き先を決めないことには原発をやめると宣言することはできない旨の回答は綱領と矛盾する」「使用済み核燃料の行き先の決定を脱原発の意思決定及び宣言の前提条件にすることは実質的に原発ゼロ社会の実現を不可能にすることだが?」と、枝野氏の発言の真意が問いただされた。

 旧立民は18年に「原発を速やかに止め、法施行後5年以内に廃炉」を盛り込んだ「原発ゼロ基本法案」を国会に提出し、枝野氏は原自連から信頼されていたが、最近では会見や講演などで、「原発をゼロにするというゴールはどこかといったら、実は100年単位」「政権を取ったら原発ゼロ法案みたいのは作らない」などと発言。これまでの方針と矛盾はしていないと強調するも現実路線にかじを切ったともいえる。前出の木村氏は「立憲民主党は原発ゼロを掲げていながら、枝野さんは代表としてふさわしくない発言だし、勉強不足。お題目で原発ゼロというだけでなく、きちんとしっかり頭の中に叩き込んで入れてほしい。そうでないと原発ゼロを希求する市民が離れてしまう」と指摘する。実現できないのなら“原発ゼロ”という言葉を簡単に盛り込んでほしくないというわけだ。

 くしくも公開質問状が報道各社に公開された15日、枝野氏は菅内閣への不信任案で趣旨弁明を行い、否決されたものの「今日申し上げた所信を次の次の国会の冒頭では正式な所信表明演説にできるようにしたい」と胸を張った。原自連は回答期限を1か月後に指定。枝野内閣まで大見えを切った枝野氏は、原自連からの質問状に詭弁を弄せずに真正面から答えることができるのか――。