米パシフィック大教授で政治学者のジュールズ・ボイコフ氏(50)が13日、弁護士の宇都宮健児氏(74)とオンラインイベントに出席し、東京五輪反対の立場を取る両者の対談が実現した。

「犠牲の祭典――オリンピックの真実」と題されたイベントは約2時間半にわたって行われ、2人は国際オリンピック委員会(IOC)を痛烈に批判。中止を求めるオンライン署名活動で42万筆を突破した宇都宮氏は「IOC幹部の傲慢で上から目線の発言により、多くの国民がIOCに疑問を持っている」と話し、中止署名には「医療従事者から感謝の声を数多く頂いている」と明かした。

 一方、五輪研究の第一人者でバルセロナ五輪サッカー米国代表でもあるボイコフ氏は「IOCは東京大会のアプローチに傲慢と言うべき自信を持っている。招致段階では(日本側と)親しげにハグをしていたが、東京に開催地の権利を与えるやいなや、ガッチリと日本を握り込んでしまった」と話した。

 ボイコフ氏は「オリンピック秘史 120年の覇権と利権」の著者として知られ、かねてIOCの悪しき体質に警鐘を鳴らしてきた。IOCが東京都と交わした〝不平等条約〟について「他の五輪開催国と同様に日本の主権を削り取っている」と指摘。先日、菅義偉首相(72)が開催可否を迫られた際に「私は主催者ではない」と〝逃げ発言〟を放ったことを例に挙げ「菅首相の言う通り、日本の首相といえどもIOCの前ではパワーがない、無力だ。開催都市契約は本質的に五輪期間中、IOCが日本を〝植民地〟にするための招待状だ。ある意味で菅首相を〝植民地総督〟にしてしまった」と過激な言葉を並べてIOCを批判した。

 新型コロナウイルス禍という未曽有の状況下で開催都市契約が法的にどう解釈されるか?は国内外で議論の対象となっているが、長らく五輪を研究してきたボイコフ氏は「東京都および組織委員会は、あらゆる超過費用、契約に何らかの違反があった場合に生じる災害費、直接的であれ間接的であれ、すべての責任を負うことになっている。さらにIOCが適切だと判断した場合には東京および各地の関係者に対して、独自の裁量で法的措置を取ることができる内容になっている」と話した。

 また、IOCメンバーについて「世界中のどの国でも5つ星ホテルに泊まり、豪華な食事をして、行く先々で国家の上層の人々と面会し、あらゆる特権が当たり前になっている。そして毎日900ドルの日当を受け取る。つまりアスリートより稼げる状況をつくり出したのだ」と語り、コロナ禍によってIOCの悪しき体質が浮き彫りになったことを示した。