フィリピン国家警察に冤罪で逮捕された芸能プロダクションのオーナーが本紙に独占告白だ! セクシーアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」でも活躍した「希軍団」の“生みの親”中村治久氏(55)が、麻薬でっち上げ捜査で捕まり、2019年8月に無罪判決を受けて以来、帰国できないままでいることがわかった。しかも持っていた金品は警察に没収され、今も返されていないという。本紙のオンライン取材に応じた渦中の中村氏が、悲惨すぎるこの2年半を振り返った――。

「漫画でもこんな無理のある話はやらない」

 そう嘆くのは、1990年代から数々の有名女優を発掘してきた中村氏。「恵比マス」メンバー希島あいり、OGの希志あいのと希崎ジェシカに、希美まゆを加えた4人組「希軍団」を手掛けた芸能プロのオーナーだ。

 中村氏は2016年末、私財約3000万円を投資し、フィリピンで次世代アイドルの発掘・育成事業を始めた。以来、現地と日本を年数回行き来していたという。

 事件が起こったのは18年6月12日だった。モデルの撮影や面接などのため、東京のスタッフたちより10日早く現地入り。午後1時すぎ、マニラ首都圏のニノイ・アキノ国際空港に到着し、タクシーで首都圏マカティ市のレンタルコンドミニアムへ直行した。午後3時すぎチェックインし部屋に入ると、面接予定だった新人モデル候補の紹介者Jに部屋番号をメールした。

 このJは現地女性スタッフで、中村氏のスマホには午前中から「建物1階のコンビニで待ってるので部屋番号を教えてください」と頻繁にメールが来ていたという。

「なぜそんなに慌てているのか少し不自然には思いました。フィリピン人の性格なのか、心配性なのか。そういう感じで受け止めてました」と中村氏。Jと会うのは、現地の元カノに17年2月ごろ「モデルルートがある」と紹介されて以来だった。

 午後3時半、部屋に来たJは、3歳くらいの男の子と、親戚だという女性Mを連れていた。この2人とは初対面。それから1時間もしないうちに突然、警察の集団10人あまりが部屋を急襲した。その寸前、Jは白い粉入りのパケ袋を手に「こんなのがあった! お前の持ち物だ!」などと騒ぎだし、警察が入ってきたと同時にいなくなったという。

「粉は覚醒剤で、それをJが私から買ったという話になり、私はドラッグ所持容疑で逮捕。全員グルでした。Mが実は警官で、部屋の外で待機する仲間とメールで状況をやりとりしていたと、後の裁判で本人が証言しています。警察は令状もなく押し入り、まだ開けてもいない私の荷物を物色。現金約140万円やスマホ2台、ロレックスの腕時計などアクセサリー類や衣類およそ500万円相当を持って行き、その行方は全く闇です」

 中村氏はその後、警察指定の病院で薬物検査を受けた。結果は当然シロだったが、タギッグ市のマニラ首都圏警察南部本部で勾留され、8月末にはマカティ市刑務所へ移送。翌19年1月末に保釈が認められるまで塀の中で過ごした。収容者800人の中で、日本人は中村氏だけだったという。

 判決が下ったのは、19年8月30日。マカティ地裁は証拠品の証拠能力を認めず無罪とした。

「コンドミニアムの防犯カメラやガードマンの証言で、警察の違法捜査が認められました。私の場合、ローカルポリスではなく、国家警察チームの『セットアップ』と呼ばれるやり方で、刑務所には同様の手口で警察に金品を取られた人たちがかなりいました。後から聞いた話では、私をハメた警官たちは全員、バラバラで地方に左遷されたようです」

 フィリピンへたつ6日前、中村氏は自身のフェイスブックに、フライトスケジュールと万札の束の写真を投稿した。これが“カモ”にされたキッカケではと思っている。

「Jは事件後、私のフェイスブックをブロックしアクセス不能にしました。彼女や警官たちは絶対許せない。でも、平和ボケしてこんな写真を公にアップしてしまった私の油断がすべての原因だと、今は認識しています」

 無罪判決から1年5か月たった今も、中村氏は帰国できないままだ。新型コロナウイルス対策の外出・移動制限措置が続くマニラで、ホームレス同然の極貧生活を送っている。