人気恋愛リアリティー番組「テラスハウス」(フジテレビ系、ネットフリックスで放送、配信)に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(享年22)が亡くなった“テラハ事件”を受けて、ネット上の誹謗中傷を法規制する動きが浮上している。かつて恋愛バラエティー番組「あいのり」(同)に出演していた元衆院議員の横粂勝仁弁護士は「法規制には賛成です」とした上で、「あいのり」と「テラスハウス」の違いを語った。

 木村さんの死の背景には、番組内の言動について、「お前が早くいなくなればみんな幸せ」などとSNSを中心に誹謗中傷に遭っていたことがあるとみられる。人気番組だったテラハは今や打ち切りもささやかれる。番組公式ツイッターには「編集や台本に悪意がある」「打ち切りにしなさい」「演出がありました、脚本がありましたとアナウンスして木村さんの尊厳を守ってほしい」と視聴者から多くの意見が寄せられている。

 テラハの前身番組ともいえる「あいのり」に出演していた横粂氏が自身の経験をもとに語った。「私が知る限りでは『あいのり』に台本はありませんでした。出演者がスタッフさんに助言を求めることはありましたが、指示通りに動ける人はそもそも集まっていません。より面白くするための編集があったのは事実です」(横粂氏)

 どう編集するかが問題になるのは両番組とも同じ。日々の生活で1割だけ怒っていた人でも残りの9割をカットして放送したら“ずっと怒っている人”になってしまう。

「テラハは現在進行形で、SNSを使って視聴者がほぼリアルタイムに反応を書き込める。今の時代にフィットしたやり方ではありますが、(炎上しそうな内容の放送直後に)現在進行形で誹謗中傷が集中してしまうリスクがある」(同)

 あいのりは自分の出番の放送を終えた後に出演者がブログなどを書くことが多く、いいところも悪いところも含めたトータルのストーリーを見終えた後だけに、誹謗中傷のコメントはあっても多くはなかったという。

「木村さんも出番のすべてが終わった後だったら、こんなに誹謗中傷は集まっていなかったんじゃないでしょうか」と横粂氏は指摘。リアルタイム色が強いことが、今回のテラハ事件を生んだのかもしれない。

 一方、この悲劇を受けて政治の世界では、ネット上の誹謗中傷を法規制する動きが活発化している。

 横粂氏は「賛成です。現在は書き込んだ人を特定するのに手間暇がかかりすぎるので、特定しやすくして抑止力にするべきです。また、海外ではネット上の誹謗中傷を対面での誹謗中傷よりも重い罪にしている国もあります。そうすることでより抑止力になるでしょう」と方向性を提言した。

 なお、ツイッターの日本法人やLINEなどが加盟するSNSの事業者団体は26日、花さんの死去を受けて、他人への嫌がらせや名誉毀損を意図した投稿をした利用者にはサービスの利用停止などの措置を取るとの緊急声明を発表。被害者から投稿者を特定する情報の開示を求められた場合、法令に基づき適切な範囲で情報提供すると明記した。

 すでにSNS運営側は動いた。あとは法規制だが、政治家への批判までもが規制されかねないと危惧する声もある。例えば、安倍晋三首相は現在最も批判される政治家で誹謗中傷も多い。ネット上には「安倍死ね」という書き込みがたくさんある。

「『死ね』は誹謗中傷です。『辞めろ』は批判。『無能』も批判の範ちゅうでしょう。木村さんの件では『消えろ』という書き込みがあったそうですが、これも『死ね』に近く、警察が動くようにするべきです。また、最近は縦読みもある。内容によっては誹謗中傷に含めるべきです」(同)

 誹謗中傷と批判の区別は運用実績の積み重ねで判断されていくという。

 テラハファンでもある横粂氏は「しっかり精査して生まれ変わるのを楽しみにしています」としている。