【プロジェクトC】外出自粛で需要増!宅配サービスの意外な実態

2020年05月12日 17時00分

自転車で街を走り回る食品配達サービス大手の配達員。実態は悲喜こもごもだ

【プロジェクトC】今、最も“アツい”であろう業界の裏側とは――。緊急事態宣言が今月末まで延長され、さらに忙しさを増しているのが食品宅配サービス業の配達員だ。あの五輪メダリストもアルバイトを始めたことで話題だが、注文の激増に不特定多数の人間との接触と、感染リスクと背中合わせともいえる彼らにその現状を聞いてみると、意外な実態が浮き彫りとなった。

 食品宅配サービスの代表格といえば「ウーバーイーツ(Uber Eats)」だろう。ロンドン五輪フェンシング男子フルーレ団体銀メダリストで、東京五輪出場を狙う三宅諒(29=フェンシングステージ)が、遠征費を稼ぐためアルバイトを始めたことでも話題となった。18歳以上で自転車や原付きバイクなどを所有していれば都合のいい時間、場所で働ける手軽さが受け、配達員数が急増している。昨年7月の段階で1万5000人に達したが、コロナ禍もあってその数は右肩上がり。飲食店の登録数も今年4月2日時点で2万店を超えたという。

 稼ぎはどのくらいなのか。ウーバーイーツ配達員の一人で、メディアにも多数登場している、尾崎浩二氏によると「稼働するエリアなど条件にもよりますが、1日平均1万円くらいは稼げると思います。専業で週1~2日休んだとしても、ひと月で約25万円はいけると思います」。専業配達員の中には、月に50万円近く稼ぐ“スゴ腕”もいるが、ごく少数だという。

 と、ここまではコロナ禍前の話。国難となった今、配達員を取り巻く環境はどう変貌しているのか。パッと想像してしまうのは以下の3点だろう。

(1)外出自粛による注文殺到で配達員不足では?

(2)その半面、稼ぎは多く収入面ではウハウハなのでは?

(3)職業柄、嫌な目にあったり感染の不安を覚えているのでは?

 そこで某食品宅配サービス業で専業、副業で働く配達員を取材。匿名を条件に語った実情は…。

 まず(1)に関しては「そこまで忙しいわけではない」という声が多数だった。というのも「コロナに関係なく、毎年春は配達員の数は増える。そこに休校になったことで暇な大学生や、収入の少ない芸人や役者などが副業でやるパターンが加わった。店を閉めている飲食業の人も始めている」(専業、42歳)。

 配達員が急増している上に「コロナの前までは在宅率が高いと稼ぎも多かったけど、最近は配達の数自体が減っている印象もある」と語るベテラン専業配達員は、自分を含めた複数の同業者の声として理由をこう語った。

「(テレワークや外出自粛で)家に閉じこもっている時間が長すぎるから、暇つぶしで自炊に走っている。仕事で帰りが遅く作るのが面倒、土日はゆっくりしたい、みたいな理由もないですしね。あと、毎度頼んでいると宅配に“飽きている”傾向も見られます」

(2)についてはどうか。「全体的には分かりませんが、個人的にはコロナで収入は増えましたよ」と語る37歳の副業配達員に、給与明細を見せてもらった。ちなみに彼は都心の渋谷区や港区など商業施設やオフィス、富裕層が多いエリアを“主戦場”とし、土、日のみの配達を行っている。

 まだ国内の感染が広がっていなかった2月上旬。土、日で合計13時間の稼働で得たのは約1万1000円だったが、3月末はほぼ同条件で、なんと約1万8000円と大幅アップしていた。このペースで1か月働けば、副業で10万円弱は稼げる計算だ。

 宅配数増や収入アップを実感する副業組が多い一方、専業組からは「『コロナで稼いでるでしょ?』ってよく聞かれるけど、仲間内でやるSNSを見ても、あまり稼げていない人が多いです」との声も。

 最後に(3)だが、これもイメージとは違うものだった。「最初のころは受け渡しの時に手だけ出されたり、咳をしながら出てくるお客さんもいて怖かった時もありました。今は玄関先に置く『置き配』がメインになったので、特に不安は感じないんですよね」(副業、31歳)。逆に多かったのがこんなエピソードだった。「玄関先にマスクや手紙があるケースはたまにあるし、声をかけてくれるお客さんが増えました。『大変な時期にご苦労さま』『本当にありがとう』とか、そういうのは何回もある。素直にうれしいですよ」(専業、40歳)

 コロナ禍以前から、お菓子や“チップ”として現金を渡されることもあるという。互いが疑心暗鬼なのかと思いきや、心温まる話が目立った。殺伐としている昨今だが、その裏側をのぞいてみると、こんな“捨てたもんじゃない”世界が垣間見える。

【配達員の周辺に変化】コロナ禍とあって、配達員の周辺にはこんな変化も。例えばお店側が、配達員の食事に限り、大盛り無料や割引のサービスをしたり、配達員も玄関前の「置き配」を指定した注文者に「スムーズな配達となり助かりました」といった感謝の手紙を添える動きが広まったりと、“助け合いの輪”が生まれている。

 感染予防で注文者との対面が減るなか、配達場所によってはこんなことも…。「タワーマンションによっては配達員が『配送業者』扱いになるので、住人が使う入り口は使えなかったりする。知らずに入ろうとして警備員に注意されるケースがあるんですが、その言い方が結構きついんですよ。それでトラブルになるケースをよく聞きますね」

 一方でこんな思いをした人もいた。「ある高級エリアのマンションに行ったら、30代後半くらいのキレイな女性が出てきて。渡して帰ろうとしたのですが会話を終わらせてくれず、結局“誘ってきた”んです。以前、そういう誘いに乗ってトラブった他業種の人の話を聞いていたので、お断りして帰りましたけど…」

 飲食宅配サービスの配達員という仕事が身近になり、定着したようにも思えるが「結構、社会的立場として『下』に見られている印象がある。自転車を追い抜いて舌打ちされたり、罵声を浴びせられたこともある。知り合いの中には配達中、言いがかりをつけられてケンカになった人もいました」。急成長の業種とあって、こうした側面もあるようだ。

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