先週の中上健次との出会いと同じように、山本晋也監督(82)や作家・立松和平(2010年没、享年62)とも酒場の繋がりだ。

 たこ八郎の縁で仲良くさせて貰っていた山本監督とは何本かピンク映画での付き合いがあり、映画「未亡人下宿」シリーズなどに出演させて貰っていた。それで私の劇団「はみだし劇場」のテント芝居の脚本も2本描いて貰い、八幡山の空き地で上演(1979、89年)。

 そんな我々は“ど”アングラの野外劇ではあったが、話題性も充分にあり、独自路線を貫き、演劇界に風穴を開けている自負は充分にあった。

 そのままの勢いで、和っぺい(立松)さんともゴールデン街のクラクラで意気投合! 当時は彼もテレビ朝日の「ニュースステーション」リポーターとして人気沸騰中。

 その彼の脚本をひっさげて、花園神社の片山宮司に直談判に乗り込む。「あの立松和平の脚本ならいいだろう」と快く認めてもらい、境内を借りられる事となる。唐十郎が「状況劇場」(唐組)で永年築いてきた聖地「花園神社境内」が唐組以外の劇団に貸し出す初の快挙となった。85年の事だ。

 9月27日からの初日に向けての準備中…7月24日の暑い夏、たこちゃんが海の事故で亡くなり(享年44。詳細はまた後日)、精神的にも肉体的にも辛い日々だったが、そのたこちゃんが出演予定の舞台でもあったから、何とか敢行する事に。江戸時代の百姓一揆の話だ。たこちゃんに打って付けの役だもの。東北地方のドン百姓役(愛を込めてね!)が、叶わなかった。残念。

 舞踏集団「大駱駝艦」の麿赤兒(78)が演出協力で参加、出演も。これも和っぺいさんの繋がりだ。強力な応援を貰い花園神社野外劇として上演。続いて栃木・宇都宮大谷石の採石場跡地での上演と続いた。

 その公演は話題となり、朝日新聞1面に堂々と写真入りで紹介されもした。
 主人公・万吉(私)がラスト、神となり鳥居に縛られ火だるまとなり空に舞い上がるーーー!

「鳥居を燃やすとは何ごとか!」と花園神社の氏子さん達に叱られもしたが、我々は意気揚々と終演後はゴールデン街へ繰り出し、毎夜飲み明かしたものさ!

 そんな我々を懐深く受け入れてくれるゴールデン街の看板は不夜城のごとくキラキラと輝いていた。 (敬称略)

◆外波山文明(とばやま・ぶんめい)1947年1月11日生まれ。役者として演劇、テレビ、映画、CMなどで活躍。劇団椿組主宰。新宿ゴールデン街商店街振興組合組合長。バー「クラクラ」オーナー。