【新宿ゴールデン街交友録 裏50年史】吞み続けたせいで…異世界を彷徨ってしまった男

2021年05月30日 10時00分

ゴールデン街でも古株のクラクラの外観

 先週の記事でも触れたがカウンター仲間として坂本龍一と知り合うとか、思わぬ出会いがあるように「酒場とは人と人を繋ぐ交差点」だと常々云ってる。酒はかの昔から「百薬の長」とも云われ上手に付き合えば薬にも勝るとも。しかしひとつ間違えば人生を狂わしかねない媚薬でもある。

 その私がオーナーになる前のクラクラには様々な人が交差していた。その一人にHがいる。一級建築士の資格を持ち、飯田橋に本社のある大手建設会社K組に勤めていた。クラクラの常連で毎夜呑んでいた。同じ信州人という事で仲良くなり、我が家にも良く泊まりに来ていた。そのうち酒量が増え、クラクラで朝迄呑みそのまま会社に出かける事も…それで会社も勤まる訳もなくやがて退社。クラクラのカウンターの中でバイトをするようになった。当然、男の酔っぱらいのバーテンではお客も離れるわな! 新子(注・同店の初代オーナー・ひろ新子)が近くにもう一軒オープンした事もありクラクラは閑散と。そんな事も有り、1979年私が引き継ぐのだが…。

 ある夜私が大久保のアパートに帰ったら、暗闇の中にそのHが座っていた。眼が据わり傍らには空のウイスキーの瓶が。床には鴨居や壁に掛かっていた私の洋服が全て落ちているではないか!

 彼曰く「こいつら俺を襲って来たから投げ倒してやった!」と勝ち誇り、完全に泥酔して異世界を彷徨っていた。

 その後、何とかその依存症も克服し信州に戻った。地元の工務店で働いている、との便りもあったが今はどうしているのだろう!

 何故こんな事を書くのかと云うと、私もひとつ間違えばそちらの世界に行きかねない程に毎日呑み続けの日々だからだ。酒場経営していると“お金出さずに呑める”特典が付いて来る。これが怖い。手の届く処に酒瓶があるのだ。

 ゴールデン街を徘徊する紳士淑女の皆さ~ん。お酒とは上手に付き合いましょう!! (敬称略)

 ◆外波山文明(とばやま・ぶんめい)1947年1月11日生まれ。役者として演劇、テレビ、映画、CMなどで活躍。劇団椿組主宰。新宿ゴールデン街商店街振興組合組合長。バー「クラクラ」オーナー。

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