【本紙客員編集長・ビートたけしの世相斬り】ビートたけし本紙客員編集長(70)が、演出を手がけた舞台で土下座強要疑惑が浮上した女優・鈴木砂羽(44)について「舞台の演出家は飲み屋でわめいてる全学連と同じ」と毒ガスを放った。

 鈴木砂羽が、自分が演出する舞台の出演者に土下座を強要した、って話が話題になってるね。しかし演劇の演出家ってのは、なんであんなに厳しくやるのかな? 蜷川幸雄さんは灰皿投げつけるし、つかこうへいさんは怒鳴り散らして、土下座なんか平気でやらせていた。

 唐十郎もムチャクチャなことやらせてたけど、何で新劇のヤツってのは、ああいうことを良しとしてるんだろ? 情熱の塊みたいに言っても、今の子に通用しない。土下座させたって、ヘタなものはヘタなんだから。

 ああいったいろんな舞台の演出家って、学生運動のセクトに似てるよ。革マルとか中核派とか。「反省しろ」とか「自己批判しろ」とか「ナンセンス」なんて言って、みんなが「演劇革命を目指す!」なんて言ってるうちにケンカになっちゃう感じ。新宿の飲み屋でわめいてる全学連と頭の中は何も変わってない。

 それで鈴木砂羽は、初日の2日前に代役立てて舞台やって、それを見た客が感動して泣いたなんてインチキくせえよ(笑い)。全然練習してねえだろ?

 映画監督でブン殴ったりしてるのは崔洋一くらいかな? 役者を殴らないけど、スタッフが「崔さんはたまらない」って言ってるよね。オレが映画「血と骨」に出た時、「怒鳴ったり殴ったりしたらやめるよ!」って言ったら「絶対しない」って言っててさ。でも、オレがいない時は怒鳴ってるから、スタッフに「たけしさん、毎日来てくださいよ。昨日は監督、大変だったんですから」って泣きつかれたよ。

 それでオレが失敗しても「怒鳴ったらやめる」って言ってるから怒鳴れないじゃん!? でも、マネジャーがトイレに行ったら、崔洋一が「たけしのバカヤロー!」って便所の中で怒鳴ってたって(笑い)。

「戦場のメリークリスマス」の大島渚さんも、オレと坂本龍一が「素人だから演技はできない」って言うと、「いや、怒らない。怒らないから」って言うから出たんだ。それで別の役者と一緒のシーンで、そいつがちょっと間違ったら「何だ貴様。お前がそれだから、たけしが演技できないんだ!」って、かわいそうに怒られちゃってさ。申し訳ないからウラでその役者に「すいません」って謝ったよ。

 映画監督も昔の人はそんなのばっかり。山田洋次とかは、主役を怒らずに2番手の役者を徹底的に怒るし。結局、演出家も映画監督もイビる伝統があるよね。新劇のヤツもウラでは全く現代に合わないことをやってるんだ。