【多事蹴論111】キング・カズが“悲願達成”に苦言した理由とは――。2011年12月、J2横浜FCに所属する44歳のキング・カズこと元日本代表エースのFW三浦知良は5人制サッカーのフットサル参戦を表明し、Fリーグのエスポラーダ北海道に加入することになった。Jリーグと掛け持ちで米大リーグのドジャースの大谷翔平投手で話題となる以前に元祖“二刀流”として大きな注目を集めた。

 12年1月におなじみの背番号「11」でFリーグデビューを果たすと、高い知名度を武器に大きなムーブメントを巻き起こした。同年9月、日本サッカー協会は同年11月のフットサルW杯(タイ)に向けてカズに同日本代表入りを要請。カズも再び日の丸を背負うことを快諾した。00年12月、フィリップ・トルシエ監督率いるA代表が臨む韓国戦(出番なし)にメンバー招集されて以来、約12年ぶりの“代表選出”となった。

 フットサル代表はW杯出場権を得ており、カズが最終登録メンバー入りすれば、自身初のW杯出場を果たす。1998年フランスW杯に向けては岡田武史監督率いる日本代表の主力として活動していたが、開幕直前にメンバー外となり、夢見てきたW杯出場はかなわなかった。この落選は社会問題に発展し、大きな波紋を広げた。それだけにサッカー界のみならず、世論もカズの「悲願達成」に大注目し、報道も過熱していった。

 そんな世間の盛り上がりを静観していたカズは戸惑いを隠せず、異議を唱えた。「誤解のないように言えば、今回はW杯出場とは思っていない。僕の思うW杯とはサッカーのW杯であって、フットサルのW杯に出ることではない。もちろん、日の丸を背負い、国を代表して戦うことに変わりはないし、いつも通りに全力でやるけど、サッカーとフットサルは違うものと考えている」と胸中を吐露した。

 カズは05年に横浜FCからオーストラリア1部シドニーFCにレンタル移籍し、クラブW杯に出場した際も「日本人初出場になるので“日本代表”としてプレーする。ただ、本当のW杯とは違うから。ここからW杯を目指すよ」と語っていた。W杯に出るという夢をかなえるため、単身ブラジルに渡り、プロになったカズにとってフットサルW杯出場は非常に名誉ではあるものの「悲願」ではないわけだ。

 だからこそフットサルに挑戦することになった時も、サッカーを一時休業するのではなく両立することにこだわった。「僕にとってW杯は今でも夢であり、現役のサッカー選手である限りチャンスはあると思っていますから」と宣言した。12年11月、カズはフットサルの日本代表メンバーとしてW杯に出場。途中出場ながら3試合でプレーし、ノーゴールながら日本の1次リーグ突破に貢献した。
 (肩書などは当時)