ボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ(27日、トヨタアリーナ東京)で王者・井上拓真(30=大橋)に挑戦した同級1位・那須川天心(28=帝拳)は0―3(111―116×2、114―113)の判定で敗れ、王座奪取に失敗。昨年11月の同王座決定戦で敗れてからの雪辱はならなかった。7ラウンド(R)にダウンを奪うなどしたものの、ポイントが拓真に流れての惜敗に「何が何だかわからない。難しいです、ボクシング」と悩める心情を吐露した。

 両者とも慎重な立ち上がりの中で、鋭い右ジャブで先手を取っていたかのように見えたが、4R後の公開採点では2者が拓真リードの採点。那須川を指導するGLOVESジムの葛西裕一会長が「ビックリしましたね。想定通りの展開だったので」というほどの計算外だった。

 7Rにはダウンを奪うなど、最後まで一進一退の攻防を繰り広げたが、最終的には点差が拡大。那須川は「あれはどうなんですかね。腹も効いていたし、顔も嫌がっていたし、本当にボクシングで負けた感じ。ポイントゲーム」と不満を押し殺すかのように振り返った。

 敗れた後のリング上では、拓真とは多くは語り合わず。その時の心境を「めっちゃ悔しいですよね。何が何だか分からない。これだけやっても無理かと」と説明。「難しいです、ボクシング。こんなに難しいかって思います。倒すだけがボクシングじゃないんだなっていう。ダメージだけがボクシングじゃねえんだなって。ちょっとしたポイントだったりとか、なんか優位に見せるとか、そこの学びが必要なのかなって思いましたね」と声を振り絞った。

 プロボクシングの採点は有効打、積極性、試合の主導権を握るリングジェネラルシップ、ディフェンスを評価。片方に必ず10点満点にして点差を付ける10ポイントマストシステムは、1990年代から一般化した。優劣が明らかでも微妙な場合でも同じく1点差をつける方法には、帝拳ジムの浜田剛史代表も「この採点基準、まあ約30年、ボクシング関係者でも真っ二つに割れることがある。常に優劣をつけるというのは難しいもんだと、何回やっても思いますね」ともどかしさを口にした。

 那須川は今後のボクシングとの向き合い方について問われると「分からないですな。今は口にしたくない。2回負けてますし、いろいろ考えますね」と悩みは深まるばかり。浜田代表は「まず、本人の意思ですよね。今日、明日には出ないでしょうから、それを確認してからの話になりますね」との考えを示した。

 神童はボクシングという名の迷宮から抜け出すことはできるか。