【シングル・マン/RCサクセション(1976)】

 RC3枚目のアルバムにして初期の最高傑作。トリオ時代に終止符を打った作品であり、発売から1年もたたないうちに廃盤となったが、ロックバンドに大変身してライブハウスで評判を集めるうち、再発売運動が起きて1980年に再リリースされたのは有名な話だ。

 それ故にアルバムには憎悪、嫉妬、怒り、悲しみ、欲望、諦観など人間のあらゆる感情が渦巻いている。不遇期を過ごした清志郎の偽らざる等身大の音楽がここにはあり、やがて無敵のロックバンドに変身する負のエネルギーに満ちている。

 A面は悪意と愛情が背中合わせになった「ファンからの贈り物」で始まり「やさしさ」「ぼくはぼくの為に」など当時の清志郎の諦観に満ちたナンバーが続き、それらと真逆のあまりに美しい「夜の散歩をしないかね」で締めくくられ、B面へ移る。

 壮絶な鎮魂歌ともいえる「ヒッピーに捧ぐ」から、ねじれ曲がったラブソング「うわの空」「冷たくした訳は」、そしてアルバムのハイライトでもある名曲「甲州街道はもう秋なのさ」へ続く。あまりにも暗く感傷的なラブソングだが、清志郎の叫びは聴く者の魂に突き刺さり考える間も与えない。

 そしてラストを飾るのは不朽の名作「スローバラード」。どれだけの人がこの曲に胸を揺さぶられただろう。とにかく永遠の名盤。帯なし中古盤なら比較的廉価で買えるので、当時の空気を感じるためにもぜひアナログ盤で聴いてほしい。似た夢を見られるかもしれない。