東京スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成される東京映画記者会は28日、選考した「第68回ブルーリボン賞」各賞を発表した。「TOKYOタクシー」の山田洋次監督(94)が自身にとって48年ぶり3度目となる監督賞を獲得。〝巨匠〟は同作で主演した俳優の木村拓哉に対する評価、日本映画への提言、健康長寿の秘密を語った。

 同作は、タクシー運転手(木村)が東京を見納めたいという85歳のマダム(倍賞千恵子)を乗せ、思い出の地を走る物語。

 山田監督は監督賞を初受賞した1966年度の第17回を振り返り、「当時、喜劇は(格が)低く見られていたところがありました。この賞が喜劇をちゃんと評価してくれたことがとてもうれしかった。なんてすてきなんだろうと感じたことを思い出したんですよ」と話す。「今回久しぶりの受賞で、僕自身が若返ったような、そんな気持ちです」と喜びを語った。

「二階の他人」(61年)で監督デビュー。「男はつらいよ」シリーズ(69年~)や「幸福の黄色いハンカチ」(77年)、「たそがれ清兵衛」(2002年)など、65年に及ぶ監督歴で数々の名作を世に送り出してきた。

「TOKYO――」で、倍賞とのダブル主演だった木村の座長としての姿には目を細めた。

「(木村は)撮影が終わるまでちゃんと現場にいる。普通の俳優はそうはしませんよ。休んだほうがいいから『お疲れさまです』と帰る。それが不誠実というわけではないけども、彼は主役の映画にはこういう臨み方をするんだと決めて自分を律してるんじゃないのかな」

 近年の邦画は「鬼滅の刃」などアニメのヒット連発に沸くが、憂いを感じている。

「楽しく笑えるような映画がさっぱりなくなっちゃった。映画館に行って思いっきり笑って、『ああ面白かった』『楽しかった』と言って帰る映画を皆、求めてるはずなんだけど、なぜなくなってしまったのか。重苦しい映画だけが作られているというかね。軽快な映画はなぜ作られないのか。そういうものを求めてる人は皆、アニメーションを見てるのかな」

 邦画に関わるすべての〝映画人〟で真剣に考えるテーマだとした。

 御年94。元気の源は何か。

「ステーキはいいですね、食べやすくて」

 価格は「高くつく」とうなずきつつ、「安いステーキじゃダメ」が持論だ。「高くなきゃ、おいしくないんだよね。これが問題」と笑う。

 ひるがえって「上等なステーキみたいな映画が作れればいいんだけどね。わあおいしい、ああよかった、みたいな」と思いをはせた。

 今なお〝肉食〟にこだわる巨匠はこれからもメガホンを取り続ける。

 2月17日、都内で授賞式を開催する。受賞は以下の通り。

作品賞 「国宝」(李相日監督)
監督賞 山田洋次監督「TOKYOタクシー」
主演男優賞 妻夫木聡「宝島」
主演女優賞 広瀬すず「ゆきてかへらぬ」「遠い山なみの光」「片思い世界」
助演男優賞 佐藤二朗「爆弾」
助演女優賞 森田望智「ナイトフラワー」
新人賞 渋谷龍太「ナイトフラワー」
外国作品賞 「教皇選挙」