21日のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第36回、地本問屋を営む主人公・蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)のもとで執筆してきた人気戯作者の恋川春町(岡山天音)が思わぬ形で世を去る〝サプライズ〟があった。

 幕政を動かした田沼意次(渡辺謙)が失脚・死去し、徳川11代将軍家斉下で老中首座となった松平越中守定信(井上祐貴)が権勢を振るう。定信をやゆする黄表紙本が逆鱗に触れた春町は追い詰められた末、自刃に至る。

 この現場にはなぜか桶があり、春町は頭を突っ込んだ。なきがらを見た蔦重は、側頭部に豆腐が付着していたことに気づく。桶の中には豆腐が。戯作者らしく「豆腐の角に頭ぶつけて死んだってことにしたかったんですかい?」と仲間たちは推測した。

 春町は1万石の駿河小島藩主・松平信義(林家正蔵)の家中で、倉橋格という武士だった。文武を奨励する定信は、同様の立場にあった朋誠堂喜三二こと平沢常冨(尾身としのり)も含めて、主君を通じて執筆への圧力をかけていく。ところが信義は立派な主君で、春町をかばった。

 当初、自身を死んだことにして別人の戯作者として生きる道を模索した春町。信義は、何の目立ったところもない小島松平家にあって「表立って言えぬが、恋川春町は当家唯一の自慢。私のひそかな誇りであった」と春町を前に明かし、手助けを惜しまなかった。

「豆腐の角に頭」は古典落語の演目「穴どろ」で出てくるエピソード。大みそかに金の工面が立たない男が、女房から「豆腐の角に頭をぶつけて死んでおしまい」と罵倒される。主君を落胆させる自害を選んだ春町だが、豆腐を使ったプラスアルファの演出で「自慢の家臣」らしさも訴えた。それはドラマとして、落語や正蔵へのリスペクトにつながる。

「穴どろ」は、正蔵の先代にあたる八代目林家正蔵の名演集にも収められている。