認知症を患い4日に他界した大御所演歌歌手・橋幸夫さん(享年82)の通夜が9日夕、東京・文京区の傳通院でしめやかに営まれ、式後、葬儀委員長を務めた所属事務所「夢グループ」の石田重廣社長(67)が囲み取材に応じた。

 橋さんと石田社長は十数年前からの付き合い。その人柄に触れれば触れるほど石田社長は橋さんを好きになったという。そして今年5月、石田社長は橋さんのアルツハイマー型認知症を公表した。

「僕も覚悟しました。おそらくそんなこと発表すれば、『何でステージ上でそんな病気の人を仕事させるの?』というクレームがいっぱい来るのも、覚悟の上でございました」と、当時の心境を振り返る石田社長。

 その翌日、2人は仕事で一緒になり、石田社長は「橋さん、何か言いたいことあるんじゃない?」と尋ねた。「社長、昨日、俺と社長、いっぱいテレビ出だぞ」と言う橋さんに、石田社長は「あ~っ。橋さんゴメン! 勝手なことしてゴメン」と謝った。ところが橋さんは「いいよ。だって言った方が楽。でも、社長も大変だろうな」と逆にねぎらわれたという。

 昨年8月から全国を回っていた「夢グループ20周年記念コンサート」ツアーでは観客から橋さんへエールが飛んだこともあった。

「今までなら、橋さんがお客様に勇気と夢を与えてそれが仕事だと思うのが、お客様から橋さんに声援があって、橋さんがそれに応えていく、そしてお客さんが『やった~! ガンバレ、ガンバレ』とスゴかったんです」

 橋さんは5月末に一時入院するも、6月8日に退院。その3日後には滋賀公演でステージ復帰したが、6月半ばからまたずっと入院生活となった。認知症の症状は重くなり、結局ステージには戻れないまま天へ旅立った。

 石田社長が橋さんと最後に話したのは、7月1日の自身の誕生日。橋さんより18歳年下の妻・真由美さんから電話があり、「今日絶対『誕生日おめでとう』って(橋さんに)言わせる」と宣言されたという。石田社長は「無理に決まってるではないですか。言葉も何も喋らないのに…」と返した。

 とりあえず電話口の橋さんに、石田社長は「橋さ~ん、早く元気になってね~」と言った。橋さんの横にいる真由美夫人は、大きな声で「社長の誕生日だよ今日は。目開けなさい!」と話し掛けたという。すると橋さんは、小声ながらも「社長、誕生日おめでとう」。それが石田社長と橋さんが交わした〝最期の会話〟になった。

 囲み取材で石田社長の傍らにいた所属歌手・保科有里(63)は、泣き腫らして目が真っ赤。ラストコンサート(滋賀公演)で橋さんとデュエットした時のことを振り返った。

 保科がいつもの甘え声で「キーがちょっと高いんです橋さん♡」と言うと、橋さんは「全然下げていいから」と保科に合わせてくれたという。いつも橋さんは「いいよいいよ」と言ってくれて、保科は「妹のようにかわいがっていただいて、いい思い出しかないですね。ありがたくて…」と声を震わせ語っていた。

橋さんに寄り添いコンサートで歌う保科有里(2025年6月)
橋さんに寄り添いコンサートで歌う保科有里(2025年6月)