“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介するこの連載。今回はデビュー直後から“馬鹿売れ”し、20年以上たった今も売れ続けている、最高峰の女性漫才コンビを分析してみた――。
陰の笑いの箕輪はるかさんと陽の笑いの近藤春菜さん――。数ある女性コンビの中でも、ハリセンボンは“理想のコンビ”と言えると思います。お笑いファンは大きく2種類に分かれます。陰の笑い(頭脳派)が好きな人、陽の笑い(瞬発力派)が好きな人。それぞれの最高峰がハリセンボンのお2人なのです。
2人ともNSC東京校9期生(2003年入学)ですが、この期で最も売れているのがハリセンボンです。同期には囲碁将棋、しずる、芝大輔(モグライダー)、そえじまひでき(ぽんぽこ)などがいます。
結成1年目の04年にはM―1グランプリの準決勝に勝ち進みました。結成1年目で準決勝に勝ち進むことは容易ではありません。特にハリセンボンの漫才はリズムやスピード感、ボケ数、極端なキャラクターなどに特化しない正統派漫才。1年目ではまだ声量もそれほど高くはないし、現在のようにリアクションに特化したツッコミ、つまり「角野卓造じゃねーよ」のような言葉がまだ発見されていない時代です。その状態でM―1に出ても、普通は埋もれてしまいます。実力が抜きんでていたということでしょう。
ちなみにM―1の決勝に女性コンビが勝ち上がるのはとても難しい。過去24回開催されましたが、決勝に進んだ女性コンビはアジアン(05年)、変ホ長調(06年)、ハリセンボン(07、09年)、ヨネダ2000(22年)の4組だけ。その中で、2回決勝に勝ち進んだのはハリセンボンだけです。M―1を基準に考えると、日本で最も実力がある女性漫才コンビと言えるでしょう。
ハリセンボンが最初に持ったレギュラー番組は、05年10月から06年3月に放送されたTBS系のバラエティー番組「10カラット」だと思います。この時、ハリセンボンはまだデビューして1年くらいでしたが、早くもレギュラーを持ちました。ほかにアームストロング、オジンオズボーン、オリエンタルラジオ、トップリード、バッドボーイズ、プラス・マイナスなど、当時若手だったメンバーが出演していましたが、ハリセンボンの活躍はもう売れる立ち回りにしか見えませんでした。
当時の出演者で、現在もテレビで活躍しているのはハリセンボンとオリラジの藤森慎吾さん、あとは当時アームストロングだったとにかく明るい安村さんくらいじゃないでしょうか? この番組から20年がたちましたが、今でも売れ続けているのがすごいと思います。
テレビタレントのイメージが強いですが、ハリセンボンのすごいところはネタです。レベルがとてつもなく高いところにあるので、表現が謙虚なのです。「自分たちは漫才が面白いんだ!」といった見え方が一切ないところも見習いたい部分です。
よくあるのが、ネタをやっていない売れている芸人に対して言われる「舞台に立ってないと芸人じゃない」などといった陰口です。売れていない芸人やライブシーンを推すお笑いファン、ネットアンチなどがよく言いますが、ハリセンボンに関しては一切当てはまらない。ここまでの功績を成し遂げている芸人は、誰も文句を言えないレベルだということを理解してほしい。
平場のすごさで言うと、春菜さんがイジられる時の瞬発力が目立ちますが、これはイジられるまでの雰囲気づくり、特に顔が素晴らしいのです。イジられない芸人がよく「イジられたいんだよね」と言うことがありますが、そういう芸人は春菜さんのイジられるまでの所作を見習ってほしいと思います。イジられた時の声量と声質も素晴らしく、イジった側もうれしくなるようなパフォーマンスをするから次もまたイジられるのです。
一方のはるかさんは大喜利力が素晴らしい。弱々しく、答えた時の言葉選びとしっかり聞き取れる声量、中毒性のある面白さがある。正反対の個性を持つ2人が組んだ、最高のコンビではないでしょうか。
☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。












