【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。プロレスラーのアントニオ猪木さんが1日にお亡くなりになりました。ジャイアント馬場さんと共に日本のプロレス界を盛り上げ、日本中を熱狂させました。プロレスファンだけではなく、闘魂ビンタや「元気があれば何でもできる」「1、2、3、ダーッ!」のパフォーマンスで多くの人に親しまれました。

 リング外でも参議院議員を2期務め、湾岸戦争(1990年)ではイラクで人質になった邦人の解放に尽力しました。ここ数年は病魔との闘いと、まさに闘い続けた生涯だったのではないでしょうか。

 今回はプロレスをテーマに、ミッキー・ローク主演映画「レスラー」(2008年公開)を紹介したいと思います。かつてのスターレスラーだったランディは、すっかり落ちぶれてしまい、スーパーでアルバイトをしながら辛うじて現役を続けています。妻にも逃げられ、娘とも離れてトレーラーで1人暮らし。試合中に心臓発作を起こし医師から引退勧告をされ、自分の人生を見つめ直すという物語なんですね。

 そのランディを演じたのがミッキー・ロークです。80年代に「ナインハーフ」などに出演し、最もセクシーな俳優として人気でした。なのに、一時ボクサーに転身したんです。ボクサー引退後に俳優に戻るんですが、ボクサー時代のケガを治すために整形手術を受けて失敗してしまい、顔が変わってしまって。仕事もなくなっちゃって、“あの人は今”状態だったんですが、この「レスラー」で俳優として見事に復活しました。

 そういう意味で、この映画はミッキー・ローク自身の物語でもあります。自身のキャリアと落ちぶれたレスラー役が重なり、とてもリアルなんです。結末は本編に譲りますが、命をかけてリングへ向かう姿はシビレます! 

 実はこの映画には裏話があって。製作会社は当初ランディ役に大物俳優を起用したかったんですが、ダーレン・アロノフスキー監督が「ミッキー・ロークじゃないとダメなんだ」と。製作会社は「だったらお金を出さない」となり、わずか600万ドルという超低予算で製作されました。ところが、映画は大ヒットしました。

 サラリーマンも50代ぐらいになると、会社や家庭での自分の居場所を考えますよね。そんな中で「もう一回やってやろう!」と、猪木さん同様に闘魂を呼び起こしてくれます。猪木さんをしのびつつ、この作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。