昨年5月、東京・小金井市のライブ会場でアイドル冨田真由さん(21)をメッタ刺しにした殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われたファンで無職岩埼友宏被告(28)の裁判員裁判が20日、東京地裁立川支部(阿部浩巳裁判長)で始まった。

 事件の2年前から冨田さんのファンだった被告は、SNSで結婚を迫ったり、ライブ終演後につきまとうなどストーカー化。プレゼントした腕時計と書籍3冊を送り返されたことに逆上し、昨年5月21日、冨田さんを待ち伏せしてナイフで首や胸、背中など計34か所をメッタ刺しにする凶行に及んだ。
 上下黒のスーツに青のネクタイ姿で出廷した岩埼被告は「(間違い)ありません」とやっと聞き取れる程度のか細い声で起訴内容を認めた。弁護側は「計画性のない突発的な犯行」として“減刑”を狙いたい考えだ。

 その法廷でハプニングが起こった。負傷状況を説明した人体図を見た裁判員の男性の体調が急変し、突然「う~、うわぁ~」とうめいてのけぞり、天井を仰ぐと、今度はバタンと勢いよく前傾姿勢に倒れ込んだ。しかし、被告はその瞬間も裁判員を気にするそぶりもなく無表情にうつむいていた。

 他者への共感がない一方で、冨田さんにはひとりよがりに求愛した被告はプレゼント選び一つとっても理解不能だ。

「冨田さんからつっ返された3冊が『漁港の肉子ちゃん』(西加奈子著)、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(万城目学著)、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(押見修造著)の、作者も内容もバラバラの“○○ちゃんシリーズ”なのは何か意味があるのか」と傍聴した記者らもお手上げ状態。

 冨田さんは調書で「身勝手な思い込みで私を殺そうとした。以前(被告が)『死んでしまいたい』と言っていたように死んでほしい。それが無理なら一生、刑務所に入ってほしい」と極刑を求めている。事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされながらも遮蔽措置を取り裁判を傍聴している。

 体調次第では意見陳述も予定しており、実現すれば事件以来、遮蔽板越しに被告の前に立つことになる。人生をメチャクチャにした冨田さんを前にしても、岩埼被告は顔色一つ変えないつもりだろうか。